第20話 僕と幼馴染と願いの結晶 後編―4―

〖本当に好きな人―13―〗


あれから、1週間が経つ。

ようやく、時坂が面会しても良い状態にまで回復したので、僕は天咲さんを連れて病院に向かった。

"コンコン”

と、ドアを軽くノックする。

すると、返事が聞こえた。良い様だ。

「失礼します…………時坂、調子はどうだ?」

「うん………結構回復して来たよ。この通り!!」

そう言って腰を回す。

うん、大丈夫……………………、

「…………うっ……!ハハ、まだ、駄目かもっ」

じゃなかった。

時坂は、強がっている。

僕達に心配させまいと、元気なフリをしているだけなのだ。

本当は、辛いはずなのに。

「……………玲葉っ……!!本当に……心配したんだよ?もう………駄目かと思ったもん……っ!」

天咲さんが、時坂をそっと抱きしめる。

まるで、再開した親子の様だ。

「…………ハハ。夢乃ちゃん、ちょっと痛いよ?私、これでも病人なんだからっ」

「あっ!ご、ごめん!!そんな気、全然無くて!」

「…………………ううん、嬉しい。ありがとう」

今度は、時坂がぎゅっと天咲さんを抱きしめる。

天咲さんは、泣いていた。

これを見て、僕も少し泣きそうになった。

もしかしたら、泣いていたのかもしれない。

でも、そんな自分の事は気にもしないほど。

二人の絵図は、とても美しかった。


そして、そこで僕が言った一言が場を凍らせた。


「………なぁ、時坂。時坂の"裏”には、誰がいるんだ?」

「……………私は、ただ……………………」


"タッ”


と、音がした。

反射的に後ろを振り向く。

ドアが、少し開けられていた。

「……………くっ!誰だ!?」

もう、どこにも見当たらない。

どこかに、走って逃げたんだ。

時坂と、僕達の会話を聞いていた…………?

でも、これで確信がついた。

時坂玲葉の裏には誰かいる。

まぁ、時坂が言わないのなら無理には言わせない。

でも、そう遠くない内に。

僕は、そいつと会うかもしれない。

そんな気がする。

外は、生憎の曇天の空模様。

今にも、雨が降り出しそうだ。

このまま、悪いことも全て流してくれたらな、と僕は密かに思ったりした。



〖本当に好きな人―14―〗


僕は、この数日で時坂の身の回りの事はほぼ調べた。


時坂玲葉。

12月25日生まれで、血液型はAB型。

両親は小さい頃に離婚しているらしく、今は地方から祖父母が毎月の生活費を振り込んでくれているらしい。しかし、住んでいる場所は不明。

ちなみに、彼氏はいないらしい。


これが、僕がこの数日で調べ上げた情報だ。

うん、自分にしては、かなり頑張ったと思う。

でも………………これって………。

時坂玲葉の誕生日と僕と天咲さんの誕生日が全員一致しているのだ、12月25日で。

凄い、偶然だな………。


そして…………一応、天咲さんの事も調べた。何か、僕の記憶回復の手がかりになるかもしれないからな。


天咲夢乃。

12月25日生まれ。

血液型はA型。

僕の家の隣に住んでいて、幼馴染…………らしい。

ちなみに、現在彼氏はいない。心に決めた人がいるとの事。


う〜ん………情報が極端すぎる。いや、心に決めた人がいるなら、応援しなきゃな。

にしても……………。

まずは自分の記憶を取り戻したいよなぁ…………。

そしたら、何か時坂の事について、天咲さんの記憶の中にあるかもしれないし…………。


そうだ……………………。



よし、良い方法を思いついた。













天咲夢乃との記憶を思い出すかもしれない、唯一の方法を――――――――――――。

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