第19話 僕と幼馴染と願いの結晶 後編―3―
〖本当に好きな人―10―〗
発砲音が響いた。
静かに、僕の前で拳銃から弾が放たれた。
その弾丸は、少女の腕に当たり――――――――、
最期に少女が見せてくれた表情は、"笑顔”だった。
少女は、笑っていた。
そして、何かを呟いた。
聞こえはしなかったけど、確かに口はこう、動いていた。
"さようなら”
と。
「…………っ!!時坂っーーーーーーっ!!!」
〖本当に好きな人―11―〗
日が明け、次の日の朝。
僕は、学校には行かずに天咲さんと病院に行った。
時坂は、今も集中治療室に入っている。
「…………ごめんね。私があの時、もっとどうにかしていたら…………っ!」
「…………いいや。天咲さんには感謝してるよ。もし、あの時天咲さんが時坂の体勢を崩してくれなかったら確実に頭に当たってた……………」
そう。
時坂は、元々最初から自分で命を絶つつもりだったんだ。あの時、僕が時坂を選んだとしても、だ。
すると、集中治療室のランプが消えた。
中から運ばれてきたのはあまりに、痛々しい姿をした時坂玲葉だった。
「先生っ!!時坂は……………?!」
「………………一命は取り留めましたが、まだ危険な状態です」
「……………そうですか…………。先生、お願いします。絶対に、時坂を助けて下さい」
「最善は尽くします」
そう言って先生は廊下の奥へと消えていった。
天咲さんは真っ先に時坂の元へと駆け寄った。
そして、時坂の手を握る。
「…………玲葉。絶対に生きてね?死んじゃダメだよ…………絶対、死んじゃ……やだよ………っ!」
そう言いながら天咲さんは泣き崩れた。
涙を流しながら、だけど、手は離さずに。
それを見て、僕も胸が締めつけられる様だった。
〖本当に好きな人―12―〗
まだ、面会をしてはならない状態の様なので僕と天咲さんは学校に向かうことにした。
あまりにも大きい不安を抱えながら。
「…………そうだ!…………柊太…………っ!!」
「……………どうしたんだ?」
僕は、今頭の中でどうにか事態を整理しているんだ。だから、どうか放っておいてくれ…………と言おうとしたけど、それより先に天咲さんの言葉が出た。
「柊太さ……………私の事、夢乃って名前で呼んでくれたけど………もしかして、思い出した?」
………………。
「…………いや、覚えてないな。天咲さんの事を名前で呼んだ?僕が?ありえない…………」
「えぇーーー?!絶対に呼んでたよ!!私、覚えてるもん!」
「……………さぁ?それより……………」
どうにか話題を逸らそう。
「………それよりじゃなくて……っ!まぁ、いいか…………何?」
「……………天咲さんって普通に可愛いよな」
「―――――――――――――へ?」
〖本当に好きな人―13―〗
「柊太…………今、なんて――――――――?」
「思った事を口にしただけだ。………ごめん、忘れてくれ…………」
「…………………ううんっ!!」
天咲さんが僕の手を両手で包み込むようにして握る。かなり、ドキッとした。
「私は、とっても嬉しいよ、柊太!!」
でも…………………!!
僕はそっと手を離す。
これは、ダメだ。少なくとも今は。
「…………ごめん。今は止めよう。………時坂、頑張ってるからさ」
「……………そう、だね」
天咲夢乃。
記憶のどこかに彼女はいる。
でも、それを掴む事は出来ない。
まだ、思い出せていない。
でも、少なからず。
彼女にある感情は芽生えてきた。
僕は多分、いや、きっと。
彼女の事が大好きなんだ―――――――――――。
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