第18話 僕と幼馴染と願いの結晶 後編―2―

〖本当に好きな人―08―〗


「――――――――僕が、君の英雄――――?」

少し、いや、かなり困惑している。

天咲夢乃は僕に手を差し伸べてくれている。

僕は、その手を握ってどうにか起き上がった。

「……………うん。君……柊太は、覚えていないかもしれないけどずっと、私の英雄だよ」

「……………僕…が?」


「………死ねや!」


「………っ!!……ふっ!!」


…………危ない、すっかり忘れていた。

僕は三辻の一撃をどうにか躱した。

「………………ほう、前も思ったが中々良い反射神経してるじゃねぇか」

「…………下がっててくれ、夢乃――――っ!!」

「………………っ!!うん、分かった、柊太!」

「……………おい、天咲さん。そっちにつくのか?後悔する事になるぜ?」


「私は……………絶対に後悔なんてしない。柊太といられない方が後悔するし、三辻…………あんたなんかと、居ると吐き気がするの!!」


「…………ははっ……言ってくれるじゃねぇか。そうか、そうか…………じゃあ、2人まとめてあの世に送ってやんよ!!」


……………来るっ!!

後ろにだけは行く事は出来ない。夢乃がいる。僕は死んででも夢乃を、守らなくちゃいけない。

「うりゃ!うりゃ!…………さぁ、いつまで避け続けられるかなぁ!?」

こいつ………三辻は、もはや戦闘狂と呼べるだろう。

何撃も、何撃もナイフを振る。僕は、それら全てをよける。こんなものは、頭を使うんじゃない。

感覚だ。脳が、こう動けと直接全身の神経に伝えている。

しかし、それでも体力の限界はある。

「……………くっ…!」

致命傷にはならないが傷は少しづつついていく。

しかし、体力の限界があるのは、僕だけではない。

三辻も、次第に息を切らしナイフを振る早さも遅くなっていっている。

「…………………今だっ!!」

僕は、三辻が弱った隙を見て飛びかかる。ナイフを奪い首の前に突きつけた。

「…………………さぁ、どうだ?」

「………………どうだろうな、本当にどう転ぶかは分からないもんだなぁ!」

こいつは…………何を言っているんだ?

僕の勝ちだろう。

完全にこいつは抑えた。

……………他に何がある?

そこで僕は、はっと気づいた。

急いで後ろを振り向くが、もう、遅かった。


「…………し、柊太ぁ!!たす………け…て!!」


僕は、背筋が凍りついた。


そんなわけが無い。


ありえない。


信じたくない。


見たく…………………無かった。












「…………………時坂…………夢乃を離せっ!!」




〖本当に好きな人―09―〗


「…………しゅー君は、本当に夢乃ちゃんが好きなんだね………記憶が無くなった今も」

「…………正直、今は好きかどうかは分からない。でも、守らなくちゃいけないってのは何か分かるんだ」

だけど、今の僕の脳は整理が追いついていない状況だった。

時坂が………三辻の裏にいた?

そんな………わけない。

ありえないよ。

ったく、僕は多分夢でも見てんだな……ハハっ…。

「………………柊太っ」

「夢乃っ!!……………時坂、夢乃を離してくれ」

「………………嫌だよ!私は、夢乃ちゃんをここで殺すんだからっ!!もう、誰にもしゅー君と私の恋の邪魔をされたくない!」



「だって…………………私としゅー君は初恋同士だよ?私は、今でも好きなの!しゅー君の事!」



「時坂………………………」



「出来れば、こんな状況では聞きたくなかったよ」


「…………っ、じゃあ、選んで!!私か夢乃ちゃんか、ここで!!しゅー君の選択次第では私と夢乃ちゃんは死ぬことになるから………っ!!」




…………あぁ、僕はどうすればいいんだろうか?




こんなの、酷な話だろう。




僕は…………………………、っ!






「……………さぁ、選んで!!」




その時、脳裏に一瞬だけ、答えが導き出された。




「―――――――しゅう―――――た――ぁ―」




「―――――――――――――僕は――――――」













「僕は――――――夢乃が、世界中で1番好きだ」



結局、僕はこれくらいの事しか出来なかった。





そして、その結末は―――――――――――――。







僕が答えを口にした瞬間。














発砲音が冷たいコンクリートを反射して。













僕の前で、鮮血が飛び散った―――――――――。

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