第12話 僕と幼馴染と夏祭り―後編―

〖夏休み最終日―04―〗


「まだ、花火まで時間があるな…………。どうする?」

「柊太と一緒なら、なんでもいいよっ!!」

「私も、しゅー君が居ればそれでいい」

………それじゃ決まらないんだよ!いや、その気持ちはとっても嬉しいのだけれど。

困ったな…………。

「ん?あれ?柊太じゃないか!君もこの花火大会に来ていたのか?」(なんで、美少女2人を連れているんだよ!!)

うげっ………めんどくせぇイケメンがきやがった……。……コイツの事覚えてるやついんのか?

「………まぁ、そんなところだ。お前は1人なのか?」

「うっ!……ま、まぁね。誰かを俺が選んだら、その他の人達から反発が来るだろう?これが、最善の方法だったのさ……………」(何故か、誰も声をかけてくれなかったんだけど…………)

「……そういう事か。………あ、僕達は忙しいからまたな。楽しめよ」

「あ、あぁ。楽しむよ………」(なんだ?最後の"楽しめよ”が嫌味にしか聞こえないぞ………)



〖夏休み最終日―05―〗



「後20分か………そろそろ人も多くなってきたな」

そういえば、この夏祭りには謎の言い伝え?がある。それは、最後の花火が打ち上げられた時に手を握っていた人と結ばれるというよくあるやつだ。

いや、もう夢乃の花嫁ENDしか頭にないんだけど。これ、絶対。もはや、法律。

「………柊太。最後の花火の時、私の手、握っててね?」(うぅ………言っちゃった!恥ずかしいよぉ!もう、私と結婚してくださいって言ってるようなもんじゃん!!)

「あぁ。夢乃こそ、僕の手を離すなよ?」

「は、離すわけないもん!ぎゅーって握ってる!」

このやりとりがたまらなく良い。………ごめんな、時坂……バカップルで…………。

「…………影里君、私の手も握ってて?」

「………いや、それはちょっと不味い気が………」

「大丈夫。私は夢乃さんが居てもいい。3人の婚姻届………いいじゃない?」

いいじゃない!!ダメだよ!?………いや、ここで僕が新たなハーレム家族という歴史的な婚姻を………、いや、ダメだろ!僕は夢乃一筋なんだ!



〖夏休み最終日―06―〗



「本格的に人が増えてきたぞ………。2人とも、僕とはぐれないようにしてくれ」

「うん、わかった!!」

「………任せて」

2人の手を握る強さが増す。……ちょっと前までは女子にこんな風に手を握られるなんて考えてもみなかったけどな………!!

「…………くっ!!人が多い……これじゃあ、はぐれてしまう…………!!」

僕は前を向いて、出来るだけ人の少ない所を歩いているので後ろは全くわからない。

腕時計をちらと確認する。後、2分か………!なるべく、人の少ない、開けた所に!!

「大丈夫か!2人とも、僕の手、握ってるか!」

いや、もうこの状況じゃあ、誰がどこ握ってるとか分からないからな………………。

「うん、離してないよ!絶対に離さないよ!!」

「…………私も、離してない!離すわけ、ない!」

良かった………。後少しだ。もう少しで、人の少ない所に出るはずだ!!後、30秒!!

後、少し!後、少しなんだ!!こんな人が多い所で夢乃と…………時坂と、花火を見たくない!!

どうにかして、この人混みから早く抜け出さねぇと!!

僕は無我夢中だった。2人………いや、3人で、花火を見るために。いや、手を3人で繋ぐかどうかは別なんだけど。

時間の流れは早いものという。30秒なんて、あっという間だった。

僕は、どうにかあの人混みから抜け出せた。何故かそこそこ体力を使ってしまった為、息が少し上がっている。

「はぁ、はぁ………夢乃、時坂。だ、大丈夫だったか?」

ようやく、数分ぶりに後ろを振り向く。握ってある手を僕は強く握り返した。

「――――――――――え?―――」

花火が打ち上げられる。赤、黄色、緑。様々な色の美しい花火が、夏の夜空を照らす。僕と、その人の顔も様々な色に染まる。

僕達は、花火が終わるまで1度も手を離さず、握っていた――――――――。









そして、夏休み明けの学校初日。








僕は、夢乃と別れることになった。

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