第5話 僕と幼馴染と修羅場再び

《登校時にて》


「お、おはよ、柊太……………」

「お、おう、おはよう、夢乃……」

………なんだコレ、気まずい!!

まぁ、無理もないか……キス、したんだし。でも、夢乃も勇気を振り絞ったんだ。僕がこんなんでどうするんだよ…………!!

「ゆ、夢乃!その……朝は、ど、どうだった!?」

「え………ずっと、柊太の事考えてたよ?……!な、なんでもない!!今の忘れてっ!」(つい、素がでちゃったよぉ!!)

「あ、ああ………」(ずっと、僕の事を考えていた?やっぱ……そういうこと、なんだよな)

ふぅ、鼓動がヤバイ……いずれ倒れそう……

「柊太、手を握ってもらっても、いいかな?」

「え!?か、構わないぞ」

僕は夢乃の手を握る。………これでまだカップルじゃないんだから、怖い。だって、告白……してないし、されてないよな?キスは………告白じゃあないだろうし………。

「な、なぁ夢乃。僕達ってどういう関係なんだ?」

「え?!う、うっ~~!!柊太の意地悪………」

「なんでだよ?!」

言わせるなって事なのか………ふむ、奥が深いぜ。

「僕は…………友達以上恋人未満の関係と認識している。いや、していた。でも、その、この前の…………キスで、どこまでいったのかはわからないんだ」

キス=好き、とは断定出来ないので、僕は一応安全策をとってこう言った。後は、夢乃の返答次第なんだが………。

「私はっ………!!……私は、柊太とは……!!」

「…………僕とは?」

「~~~~~~っ!!い、いつか!また、いつか教えてあげる!!」

「お、おう…………」

…………なんか、また先延ばしにされた気がする………。


《修羅場~01~》


「影里君、貴方……最近どうなの?」

「え?どうって………」

「彼女とよ。もう、付き合ってるんでしょ?」

「いや、付き合ってませんが」

「は?!ど、どっからどう見ても付き合ってるでしょ?!登校時に手を繋いで来てるのに付き合ってないですって?!ど、どうかしてるわ…………」

「…………どうか、してるかもですね」

実際、どうかしてるんだよ僕達は。ほんとに、どうすりゃいいんだよ………。

すると、時坂さんは身をこちらに寄せて、

「なら、私が恋のキューピットを引き受けるわ!どうにかして、2人の愛が実るように…………!!」

と、そこに…………

「し、柊太……?ど、どういうことかなぁ?」

夢乃が現れた。

おい、どうしたキューピット!2人を離してどーするんだよ!!


《修羅場~02~》


「こ、これはだな、夢乃!訳があるんだ!!」

「2人でイチャイチャしていたのよ」

ちょっと何言ってくれてんの?!キューピットォォ!!

「柊太………私との、あのキスはなんだったの?」

「貴方、キスまでしてるじゃないっ!!」

あぁ、もう!!どうするんだよっ!!

こうなったら…………っ!!

「夢乃っ!!」

「……………ぇ…」

僕は公衆の場だとわかっていても、立ち上がって、それをした。

僕が夢乃に愛を示す、方法……………そう、ハグだ。

「……………これで、信じてくれるか?僕はお前が1番好きだってことを」

「………………うん、」

僕は後ろをチラッと振り向く。

キューピットが "今だ” と口パクでいっている。

「それでなんだが、夢乃………僕と、付き合ってくれないか?」

何故か夢乃の瞳には涙が溜まっていた。

それをハンカチで拭き終えると、僕に向かってこう、言ってくれた。

「はい、喜んでっ!!」

と。僕はこの笑顔を一生忘れないように心に刻もうと思った。

……………でも、学校で僕ら何やってんだろ。

周りの男子はキレ気味にこちらを睨み、女子はキャーキャー騒いでいる。

ありがとう、と時坂さんにお礼を言おうと振り返った時に見た暗い顔は、

何故か頭から離れることはなかった――――――。


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