第4話 僕と幼馴染と初デート

「初デート―前夜―」


(柊太の部屋)

「あぁ、言っちまったよ………告白とかに思われてねーよな?なんか、あの時は手を握られて気持ちが高ぶって…………まぁ、くよくよしててもしょうがないよな!土曜日は夢乃を全力で楽しませないと!!」


(夢乃の部屋)

「ど、どうしよう?!て、手を握っちゃったーーっ!!!でも、まさか、柊太の方もデートに誘ってくれるだなんて………あぁ、どうしよう……好きすぎるよぉ………!!土曜日は頑張ってドキドキさせないと!!」


「初デート―01―」


「柊太ーーーっ!!ごめん、遅れたかな?」

「いいや、今、来たところだ。……………」

「……?ど、どうしたの?少し、顔が赤いよ?熱でもあるんじゃ………」

「い、いや、その………夢乃がさ、か、可愛いすぎて………なんか、ごめん」

僕はなんて気持ち悪いことを言っているんだぁ!!

で、でも可愛いのは事実だから、しょうがない…。

「……ふふっ!嬉しいな!柊太がそういう事言うだなんて思わなかったよ!!ありがと!」

……やばい。怖い。可愛いすぎて怖い。

「それじゃ、行こっか!」

「あ、あぁ」


「初デート―02―」


「やっと、着いたねーーっ!!」

「うわっ!………すげぇ…」

僕達は電車に乗り、有名な遊園地に来た。何故遊園地を選んだかってのは夢乃にしかわからない。

………それにしても圧巻される。ものすごく広い敷地に様々なアトラクションがあり、1日でも足りるかどうかってぐらいだ。

「柊太っ!早く行こうよ!!」

「あぁ、だが、その前に………」

僕は呼吸を落ち着かせる。この言葉を発するのにどれだけの勇気がいるのかは、わかる人ならばわかるはずだ。

「………僕と、"手” を繋いでくれないか?」

ゆっくり、気持ちを込めて僕は言った。瞬間、きょとん、としていた夢乃が僕に抱きついてくる。

「ありがとう……、柊太から、その言葉、聞きたかった………はい、喜んで!!」

夢乃の手を握る。やわらかくて、暖かい。すごく、守りたくなる……。

「それじゃあ、行こうか」

夢乃と手を繋いだまま、僕は走り出した。


「初デート―03―」


「あれに乗ろうよ、柊太!!」

「あぁ、乗ろうか!」

僕達が最初に向かったのはこの遊園地でも、人気のアトラクションであり、最恐のアトラクションである、名物のジェットコースターだ。

………怖ぇ。び、ビビるな!夢乃に弱い姿は見せられない!!

しばらくして、僕達の番が回ってきた。2人隣同士で座席につき、安全バーを下ろす。

「ちょっと、怖い、な………」

……!!ここは、僕が何とかしないと!えっと、こういう時は…………

「…………これなら、平気、か?……」

僕は安全バーを握っている夢乃の手の上に自分の手を重ねた。ガタガタと震えている。

「ありがとう………なんか、今日の柊太、少し、カッコイイかも………」

そして、僕達を乗せたジェットコースターはレールを上り始めた。少しずつ、高くなっていく。すごく眺めがいい。自然に囲まれたいい場所だ。

「く、来るよ………」

「……あぁ、来るな。そうだ、夢乃!左向いて、ポーズ!!」

「え?!えっと、こう?」

頂上には撮影場所がある。ここで、ポーズを決めとけば、いい思い出の写真になるだろう。

そして、………………

「く、くるよっ!!」

僕は夢乃の手をより一層強く握った。

"ゴォォォォォォォォォォォッッ!!!”

っと、車輪がレールをとてつもない速さで下る音が聞こえる。

僕はチラッと横をみた。とても、楽しそうな顔をしている。風に髪が靡いている。この笑顔が、僕は好きだ。

その後もジェットコースターは下り、上りを何度か繰り返してゴールへ辿り着いた。

「あぁーーっ!楽しかったーーっ!!初めは怖かったけど、柊太が手を握っててくれたおかげで、安心できたよ!」

「それなら、良かった。僕も楽しかったぞ」

「そうだ、写真見に行こ!」

「そうだな、行こうか」

エレベーターの待機列のすぐ隣の小部屋に写真が並んであった。…………なんで、写真ごしでもこんなに可愛いんだよ、こいつ。

「お互いに、1枚ずつ買おうか」

「うんっ!!」

僕達は会計を済ませて外に出た。そういえば、お昼を食べずに来たからお腹が空いたな………。

僕が夢乃に食べに行こうと言おうとした時、

「ねぇ、一旦お昼にしない?私、お腹空いてきちゃった」

ちょうど、考えていたことが同じだったとは……。

「うん、そうするか」

僕は夢乃に返事をかえした。


「初デート―04―」


僕達は軽く昼食を済ませると再びアトラクションに乗ったりした。高い所から落ちるもの、大きいボートみたいなものに乗るもの、船のような物にのり、ぐらぐらゆれて、一回転するもの、どれも楽しかった。そして、どこでも夢乃の笑顔は眩しくて、可愛いかった。

「かなりのアトラクションで遊んだな。もう、全部遊んだんじゃないか?」

「…………まだ、1つだけ行ってない所があるよ」

1つだけ?どこだ?

「遊園地といったらやっぱり、観覧車だよ!!」

あ、確かになんだかんだまだ行ってないな。1番目立っていたのに…………。

「もうそろそろ閉園時間だし、これがラストだな」

「うん、じゃあ、いこ!」

僕は夢乃に手を引かれ、観覧車乗り場まで向かった。そのあいだはずっと、心臓が鼓動を早めていた。


「初デート―Final―」


「お2人様ですね?では、こちらにお乗り下さい」

スタッフの人の指示に従って観覧車に僕らは乗った。何故か2人とも無言のまま観覧車は上ってゆく。

僕は、夢乃を見て言った。

「その、今日は楽しかったか?」

「うん…………」

「僕も久しぶりだよ、こんなに沢山遊んだのはさ!

そして、人生で1番楽しかったよ」

「うん…………」

なんか、夢乃の様子がおかしい。

「どうしたんだ?夢乃」

「柊太、その、私の事、好き?」

っ!!………急にくるからつい、びっくりしてしまった。僕は早まる鼓動をどうにか制御する。前に誓ったんだ、ちゃんと答えるって。

「あぁ、好きだよ、夢乃」

「………っ!!ほ、本当に?」

「うん、嘘じゃない」

僕はハッキリ伝えた。今日1日で分かったんだ、僕は夢乃の事が好きだって。

「し、柊太!!外のアレ!!」

「……ん?外?」

僕は横を向いた。その時だった。

「なんだよ、夢乃、なんもない…………っ!!」

僕が振り返ると、すぐそばに夢乃の顔があって。

気がついた時にはもう、夢乃の柔らかい唇が僕の唇に触れていた―――――――――。

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