チーム
「どうも、そっちの彼は初めてましてだね。私はレルガン・ジャーネット。ヘンドリア国王より、勇者を拝命した者だ」
レルガンは純貴に握手を求め、純貴は素直に握り返した。勇者……。
「レルガンさんはこの国で最強のチーム、『ベインフォルド』の隊長なんだ。階級グリンネバルバの魔法剣士なんだぜ!」
レルガンは無邪気に自分のことを紹介する凌馬に苦笑しつつも、満更では無い様子だった。純貴は言っている事の半分もわからなかった。
「まあ、そういう事なんだ。少し、仕事が入ってね。確認をしに来たんだ」
「仕事って、どんな仕事ですか」
レルガンはうーん、と少し考えた後、「難しい仕事」と困った顔をして答えた。
「すまないね。王直々に与えられたんだ。守秘義務がある。では」
レルガンは手を振り、去っていった。
「俺はレルガンさんを超える勇者になる。ただの勇者じゃない、世界に三人しか存在しないというラジェントクラスの勇者になってみせる。お前、腐っても転生者だ。俺と組まないか」
「チームを?」
「まあ、チームとは言えねえけどよ。これから仲間も増やす。その第一号がお前だ。感謝しろよ、いつかこの世界最強の勇者になる男と旅が出来るんだからよ!」
純貴は心打たれたように胸を押さえ、パッと満面の笑みを浮かべた。
「おう! よろしくな」
「そうと決まればチーム名決めねえと。何か良いのあるか?」
純貴はうーん、と考えた後、
「リョーマーズは?」
「クソだせえな」
「じゃあ、ジュンキーズ……」
「そういう問題じゃねえ! なんだそのジャイアンズみたいな思考回路は! 小五かてめえは」
結局チーム名は決まらないまま、二人はクエスト……通称注文表を物色していく。注文表には大きく分けて二種類あると教えてくれた。
一つは、ギルドに貼られているもの。もう一つは指名されて送られてくるものだという。
「ギルドに貼られてるのは不特定多数のヤマネコ……ああ、ヤマネコってのは戦闘系ギルドに所属する人間のことだ」
「なんでヤマネコ?」
「一番初めのギルドマスターが猫好きだったたらしいぜ。特にヤマネコが。で、ギルドに貼られているのは不特定多数のヤマネコに安価で依頼ができる。いわゆる餌まき。もう一つは指名型。現代風に言えばオファーだ。割高だけど信頼出来るヤマネコを借りてくることができる」
選び方は払える額による、と凌馬は言う。
「庶民がネコを借りるのは金銭的なハードルは高い。なんせ『餌』の平均の値段より最低でも三倍以上はするからな」
凌馬は一つの注文表を取ると、純貴に渡した。注文表には筆記体で英語とフランス語が混ざったような文字が書かれ、右上には赤褐色の染料が無造作に塗られていた。
「最初はこんなものだろう。薬草集め。RPGに限らず、最初のミッションといったらこれだ。これで要領を得るんだな」
「うん。そうだね」
二人は、その注文表を受付嬢に出すと、すぐに依頼人の場所へ向かった。
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