No.2

 リョーマと呼ばれた背が170センチを少し超えたくらいの髪の毛が赤い、西部劇のガンマンの服装をした男は、とりあえずと簡素で通気性の良い旅人の服を買ってくれた。


 話がある、とリョーマは中世ヨーロッパのような街の真ん中にあるベンチに座らせた。


「いや、助けて貰ったのに服まで買ってくれるなんて、君は優しい人だな。名前は?」


「……北岡きたおか凌馬りょうまだ。ここではリョーマで通してる」


「俺は西純貴。ということは、君も転生してきたのか」


「……おう」


 先程のような元気がない。


「どうしたんだ」


「うるせえ! 何でもねえよ!」


 涙を拭きながら怒り気味で言い返された。


「さて、この世界のこと、どこまで知ってる?」


「オーク? という怪物を見た」


 ああ、と凌馬は頷いた。


「そう。魔物と呼ばれる怪物がいる。まあゲームをある程度やってる奴ならひと通り知ってるものばかりだが」


「すまん、ゲームはしたことないんだ」

「はぁ!?」


「そんな驚くか?」


「当たり前だよ。今どきゲームした事ねえ奴なんて絶滅危惧種だぜ?」

 そうなのか……。良くじいちゃんからは世間知らずと指摘されてきたが……。


「えーと、話すことがたくさんあるんだが、まずお前は七人目、最後の転生者だ。それは知ってるな?」


「もちろん」


「俺ら転生者ってのは互いを番号で呼ぶ。NO.1からNo.7まで。俺はNo.2。二番目にこの世界に来たからNo.2だ。お前はNo.7」


「何か番号に違いとかあるのか」


「あるぜ。No.1、No.3、No.5は当たり番号つってな、チート能力持ちの最強たちだ。良くラノベとかアニメとかでやってるやつ」


 純貴はずっと疑問だったことを質問した。


「その、よく聞くチートってなんだ」


「ああ、お前ゲーム知らねえからか。チートってのは、この世界の話だと有り得ないくらい強いやつのことを言う。つまりNo.1、No.3、No.5は最強な野郎たちってことだ」


 ほうほう、と純貴は頷いた。


「君はNo.2だったね」


「ああ。外れ番号だが、俺も普通に見れば十分チートだ。成長速度十倍、物理攻撃以外無効、それと全ての武器を扱える。普通は職業とかステータスによって使える武器が制限されるからな。俺はその垣根を越えられるわけ」


「職業?」


「そう。俺は銃士だ」


 自慢げにホルダーから自分の銃を見せつける。見た目は中世の海賊が使っていそうな拳銃だった。


「銃士なら知ってるぞ。ダルタニャンとかだよな」


「合ってるけど……ちょっと違う! この世界の銃士は強えぞ。全ての距離から攻撃可能だからな」


 はあ、と純貴は気の抜けた返事をする。


「それとステータスの話だ。お前のステータス見せてみろ」


「見せるってどうやって?」


「お前あのカードも……。ちっ、そういやギルドにも行ってなかったか。まあステータスの話は後にしよう。この世界は無職に厳しい。何せ日本みたいに給付金の類がねえからな。みんな何かしらの仕事を持ってる。まあざっくり分け方を説明すると、戦闘系かそれ以外、その中間だ」


「ほう」


「お前身長無駄に高いからな……ガタイもいいし戦闘系にした方がいいと思うぜ」


「ではそれでいい」


 二人はベンチから立ち上がると、戦闘系ギルドが集まる場所、通称『たか』。凌馬によると、戦闘系の職業の者は大抵ガラが悪いらしい。


「だから集り場。田舎の夜中のコンビニみたいなもんだ」


「そう言えば、凌馬はどこ出身なんだ?」


「川越」

「都会だな! 俺は長野だ」


「都会でもねえよ。東京行っちまったらな。秋葉原とか行ってみろ。川越を都会とか言えねえぞ」


 そんな田舎者同士のトークが終わる頃には、通称集り場、戦闘系ギルドの集まる場所、ユグレルに着いていた。

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