上裸の男
「七人目……最後の転生者か」
一人の少年は数字が並べられていた紙から『7』が消え、フッと笑った。どんな奴か楽しみだ。できれば美女がいい。そう、女豹のような美女だ。散々自分をその気にさせた挙句、ひらりひらりと避けられたい。
胸は……そうだな、やはり巨乳がいい。身長が高く、髪がロングでカールがかかり、口紅が真っ赤で目元にホクロがあるのがいい。それか美幼女がいい。俺好みの娘に育てるのだ。これぞ異世界の光源氏……!
「ママ、お勘定」
酒屋から出て、表の街に出る。ヘンドリアの中央街だ。ヘンドリア王国は一年中気候が安定している珍しい国で、特に農産物の収穫量は目を見張るものがある。
この異世界に来てからというもの、何一つ不自由がない。魔物を倒せば経験値が他人の十倍貰え、物理攻撃しか効かず、そして全ての武器を難なく使いこなすことが出来る。金なんて、ギルドの(自分にとって)簡単な依頼を二、三個終えれば、一ヶ月は遊んで暮らせる。
まさに俺の夢見ていた世界。ああ、やはり
街を少し歩いて、脳内に電撃が走ったような感覚がした。近くにいるな、転生者。さて、どこだ。
転生者は一目見ただけでわかる。感覚の話だが、「こいつだァァァ!!」と思ったらそうだ。
と、門の前で腰に汚い布を巻いた男が、門番と口論していた。
何だあの男は。背は高いし体は鍛え上げられているが、上裸で変質者ではないか……。
しかし、何かに引かれたように少年は、上裸の少年を見た。
「こいつだァァァ!!」
少年は走り、門番に肩を置いた。
「あ、リョーマさん、今見た通り忙しくて……」
「その男、俺の連れだ!」
門番はえ? と信じられない顔をしたが、リョーマの連れならばと上裸の男を通した。
「おお、助かった。あの鎧を着た男たちが中々通してくれなくてな」
「うるせえ! さっさと服着ろよ!」
七人目の転生者だ――
リョーマと呼ばれた少年は涙で目をはらしていた。
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