第二ラウンド


 壁に亀裂が入り、そこにパズルのピースよろしく自分が減り込んでいるのが解る。

 亀裂が入った岩は表面が少し黒くなり、後は普通の岩。

 やっぱりここの岩、アイツの炎で変質してたんだ。

 呑気に自分の身体が吹き飛んで砕けた岩を見ながらそんな事を考えているのもどうかと思って、『減り込まし』の犯人を正面から捉える。

 薄明かりの中、ソイツは紋様の様に全身を覆う眼を、それぞれがそれぞれの意志を持っているかの様に、不気味にギョロギョロと動かした。


 黒アモンの方は身体を鯖折りされた状態のまま。憑き物でも落ちた様に呆けていた。

 なんだか…全身のあちこちから私の見知った色の火がちりちり燃えている気がしなくもない。

 我ながらあそこ迄徹底的にやっちゃったから動けないのは当然…と言うか、死んでない事に驚きなくらいだ。

 対してもう一方。コッチもコッチでダメージは無さそう。

 当然だ。だって私、アイツにコブラツイストの一つも仕掛けてない。

 「まったくもう!」

 岩の間から抜け出して相手を観察する。ダメージ?不意打ちで驚かされた事と自分のドジさで腹が立ってるだけで痛くも痒くもない!


 墨と漆を塗りたくった様な光沢ある黒色の身体。そして、その体は全長大体2mくらい。蛇みたいに見えるけど、鱗が無い。

 そして、その体に散りばめられた様に、黄色と赤と白の奇妙な目玉が幾つもある。

 全身の目玉が独立した器官のように全方位をギョロギョロ見回す。

 蛇なら仕留められるけど………あれ、呼称『ヘビ』ってだけで蛇じゃない。

 鱗無いし、目玉多いし、不意打ちとはいえ、あの体躯で私を吹き飛ばせた。

 そして何より。

 「さっき迄の気持ち悪さがアイツから出る様になった…………。」

 この洞窟に入った時から感じていた気持ちの悪さ。

 こう、纏わりつかれるというか、毒されるというか、歪められる感じ?不自然さって奴!

 さっき迄感じていたアレ。黒アモンからも感じた違和感をこの眼玉蛇から感じる。

 しかも、さっきよりも濃く。ドロドロしている。

 禍々しいって言っても良い。


 「第二ラウンド……かな?」

 真っ黒な蛇がとぐろを巻き、今まで黒さで境目が見えていなかった口を大きく開けて威嚇する。

 上顎側にも下顎にも頬にも眼が光り、正直どっちが上か下か解らない妙な蛇が牙から重油の様に黒く、ドロリとした何かを滴らせながら体中の無数の眼をこちらに向けた。

 「大概の毒蛇に噛まれた事有るけど、流石にアナタだけには噛まれたく無いなッ!」

 そう言いながら地面を抉る様に思い切り蹴飛ばし、岩を爪先に引っ掛けながら散弾の様に岩を飛ばした。



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