ηクラッシュスクリーム

 幾つもの眼がギョロギョロと動き、黒炎を砕く鬼の角を捉える。

 『このままではやられる』

 本能でそれを察した黒アモンは飛び散る黒炎の輝きに紛れて、サイドステップで右へと回避しようとする……………が。

 「ここまで粘着質に狙っておいて、逃げるのは無しでしょーガッ!」

 体を左回転させながら逃げようとする黒アモンを視界に捉える。

 逃がす訳にはいかない!かと言って今から体勢を変えて攻撃しようとすれば、回転を止めざるを得ずに未だ破りきれていない黒炎の集中砲火を喰らって結局逃す羽目になる。

 もう目の前まで近付いているから、高速回転状態の私の軌道変更も出来ない。

 「なんのぉぉ!」

 相手がもし左に避けていたら、または私が右へ回転していたら、『コレ』は上手く行かなかった。

 右へと避けようとする黒アモンの首に左へ回転する腕を遠心力に任せて手を掛ける。

 同時に下半身を折り畳み、足を黒アモンの背中に左側から回り込ませて背中に足を着ける。

 「対人禁止だけど、アンタ、人じゃ無いからルール適用外だよネっ!」

 相手の首にラリアットを喰らわせつつ、胴体を相手の体の後ろ側に回り込ませて相手の背中を足で捉える。

 ラリアットを喰らわせつつ、背中を足蹴…というか踏みつけて相手の首、背骨を同時に破壊する脊椎破壊技。

 「『ηイータクラッシュスクリーム』!喰らいな!」

 ラリアットの腕と背中の足を軸に相手の体をガッチリホールドし、身体を前に折り畳む。

 ゴキャボキィ!

 炎に成られていたら決して鳴らない音。やっぱりコイツ、炎に成っていない!というか、


 「GyAAAAaaaaAAGYAGYAAAaAAAaaaaAAAaa!!!!!!!」


 骨が折れた音の後に、獰猛な牙を剥き出しにした黒アモンの口から悲鳴が響き渡り、洞窟の熱い空気を震わせる。

 黒アモンが暴れて炎を吐き出す。

 『ηイータクラッシュスクリーム』

 骨を破壊しつつ、悲鳴を上げさせる対人禁止技。

 当然だろう。首と背骨を一気に砕くんだから。悲鳴が上がるし痛い。

 でも、この技。怖いのはソコじゃない!

 「GYAAaGYAa!uloaaaaaaaaaaaaa!!!!!!」

 黒アモンが暴れ回るけど、力が入らない。

 背骨を折られてまともな動きが出来ていない。

 しかも、こちらは相変わらず体をホールドしている。

 左腕は後ろに回り込ませた下半身で押さえて動かない。

 かと言って右腕を使おうにも私の体は大半が相手の左半身の、しかも後ろに有るからまともに有効打は使えない。

 残念ながらこの技は対人禁止技だけど、そもそも人に使う事前提で作られていない。

 人の様な二足歩行で、かつ、人よりしぶといを仕留める為に作られた技の一つ。

 「これで私の…(勝ちだ!)」



 勝ちを確信して嗤うヤツにさっき、私はなんて言っていた?

 私は馬鹿か?

 洞窟の壁にめり込んだ私は自分の浅慮を呪っていた。

 ηイータクラッシュスクリームを極めている最中、鞭の様なに打たれ、黒アモンから強引に引き剥がされて洞窟の壁に私は吹き飛ばされていた。



後書き>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 η《イータ》という文字そのものに意味は有りません。

 ただ、技を喰らった相手の身体がηの様に変な曲がり方をするのでそう名付けました。

PS:

 感想でネタを頂きました。

 舞台を変えるというのは身近に在った筈なのに、盲点でした。有り難う御座います。

 陸海空…夢の世界で暴れて貰うのも良いですね。

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