ボス戦……開始?

 洞窟の中は不思議な事に明るくて、どんな状況下がハッキリと解った。

 何故、洞窟が明るいか?

 真夜中に太陽が出てるから?そんな訳が無い。それ言ったら昼間の洞窟は明るいでしょ?

 理由は簡単。この洞窟、地面や天井の岩質が妙に輝いていた。

 太陽光が入り口から差し込み、岩がそれを反射して洞窟の中を薄明かりで照らしていく。

 私が入った方の入り口はこんな場所じゃ無かった。

 「テミスちゃん、テミスちゃんがこの前石を拾った時、こんな場所ってあった?」

 「ううん、こんな石見なかったし、こんな場所も無かった。」

 私よりテミスちゃんの方が洞窟内部の風景を見ていた。

 ここから火柱が出ていたって事は、私達が居た洞窟とここは繋がってる筈。

 同じ地層の地域でここまで岩質が違うってのは……………おかしいよね。

 「多分、火柱の熱で変質した?

 でなければ、別の何かで変質した?」

 まぁ、この先の気持ち悪い気配の主が詳しい事を知ってるでしょ。

 「さ!行こう。テミスちゃん、覚悟は良い?」

 「もう、出来てる。

 行こう。」

 怪しく光る洞窟は私達だけ照らしている。

 行く先に待ち受けるは鬼、蛇、はたまた別の何か。

 行こう。生きて戻る覚悟を持って、行こう。




 洞窟が徐々に下降していく。

 地下へ地下へと下っていく。

 下れば下るほど、温度が上がっていく。

 熱が体に纏わりついていく。

 纏わりついた熱が体を外と内から焼いてく。

 帰れ帰れと突き放す。

 厭な熱。厭な火。

 気持ちが悪い。

 妙に何かを捻じ曲げられたような………気持ち悪い火と熱。




 下り道を歩いて数分。

 前に来た時に辿り着いた広間……に似た場所に辿り着いた。

 前にアモンとやり合ったあの広間、人工的に削り取られたような場所。あそこに似ている。

 一箇所だけ違う材質で出来た椅子も有る。

 太陽の反射もここまではしっかり辿り着かない様で、薄明かりが広間を照らしている。



 こことこの前来た広間、その二つには明らかに違う部分が二ヵ所在った。

 一つ、周囲の岩の材質が道中の岩同様に変に光を反射している事。

 二つ、椅子に座っているのがあの時の火炎ではなく、別のナニカだった。



 「そこに居る奴…アンタが外の変な太陽を出したの?」

 「………………」

 ナニカは黙ったまま。

 雰囲気はアモンでは無い。

 薄明かりでナニカの正体が掴めない。


 でも、


 明らかにナニカは殺意を持っていた。

 私達がここに来た途端、気持ちの悪い熱が強まり、斬り付ける様な殺意まで向けられた。

 「なーんか、アモンのリターンマッチは出来ないかもなぁ……って思ってたけど、当っちゃったなぁ………………。

 誰?」

 熱と殺意を弾き返す。

 闘気全開。集中力は全身を隈無く巡り、感覚は研ぎ澄まされていた。

 しかし、ちっとも体に力は入ってない、リラックスしていた。


 「……………………………gG」

 椅子に座っていたナニカが立ち上がり、こちらに一歩近づいた。

 「…………テミスちゃん、離れて。」

 テミスちゃんの肩を持つとゆっくり後ろに退がる様促す。

 無言でテミスちゃんもそれに従う。


 「………g……………………G………gGg……………………GyaaaaaAAAAAAaaAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!!」

 テミスちゃんが退いたのを合図に、ナニカが断末魔の様な声で絶叫した。

 同時に、周りの岩を眩く輝かせる黒い火が燃え上がった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る