セーブしますか?

 城壁から見た壁外の景色は異様で異常だった。

 勿論、空には夜なのに太陽が出てるって事もそうだけど、地上もそうだった。

 紛い物の太陽で輝く地表。

 その地表がウゾウゾ?というか、ドロドロ?というか、変に動いてた。

 最初は見間違いかと思ったけど、違った。

 「お姉ちゃん……」

 隣で見てたテミスちゃんが私の手をぎゅぅっと握り締める。

 地表が蠢いている様に見えた訳。

 それは地面を覆う大量のスライムが蠢いて、そう見えたからだ。

 ほぼ一面スライムの大群。

 それは津波の様で、溶岩流の様で蝗害の様だった。


 『蝗害』と言うものがある。

 イナゴやバッタの大群が通り道に在るものを全て喰い荒らす災害。

 その驚異は圧倒的な数。数の暴力が、普段ちっぽけで人が恐るるに足らないと考えている虫を怪物へと押し上げていた。

 正に天災と呼べるものだった。

 私の眼下に広がる光景も正にそれと同じだった。

 「この光景だけでも異常なのに……。」

 「多分、あそこが入り口だよね?」

 そう言って地面を指差す。

 スライムは地面をほぼ覆っていたが、一点だけ例外があった。

 蠢く地面の中、そこだけ見えない壁が在るように地面が剥き出しになってた。

 剥き出しの地面をよく見ると、地面から岩が突き出て、それが割れて空洞になってるっぽかった。

 スライムの群れがそこを避けて通るって事は、あそこだろう。

 「行こうテミスちゃん。」

 「行こうお姉ちゃん。」

 そう言う事になった。





 ジャンプ一回。

 不可侵地へ着陸。。

 周囲は蠢くスライムで一杯。こっちに気付いている筈なのに、私達を無視して城壁へと向かっていく、不自然なまでに一切手を出してこない。

 まぁ、当然だろう。

 割れた石…多分地下への入り口から気持ち悪い……何かを感じた。

 本能の有る生き物ならこれに好き好んで突撃する事は無いだろう。

 ドロドロして、纏わりついて首を絞めて来る様な妙な空気。

 『歪んだ何か』って言えば良いのかな?

 地下に居るのはアモンだと思っていたけど…コレ、本当にアイツ?

 妄執染みた執着心は見えたけど、それでもこんなイヤな空気纏ってなかった筈。

 本当、何起こってるの?この街、と言うか世界!

 ただでさえ治安悪い地域でマフィアの三つ巴戦争が起きている地帯にワザと飛び込んで殴り込み仕掛けた時だってここまで事件には巻き込まれなかった!

 だってその時は二日経たないで街が大人しくなったから。

 なんでも、銃撃音や諍いの音を聞きつけてやって来るONIが現れたとかで、抗争してた連中が皆半殺しに有ったらしいヨ。

 不思議だね!世界って!




 岩の割れ目から湧き上がる得体の知れない空気を無視して私達は進んで行く。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る