ここから先は死地


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>




クエストレベル:八坂八華への直接依頼

クエスト依頼者:王都冒険者ギルド本部ギルド長ガービス

クエスト概要:炎の魔人アモンの撃退

クエスト場所:王都地下洞窟

クエスト報酬:未定




王都全域の全てを揺るがす疑似太陽を作りだした原因を取り除いて下さい。

解決方法はそちらにお任せします。

こちらも疑似太陽とスライムを対処してそちらの助力に向かいます。が、タイムリミットが解らないので期待はしないで下さい。

ギルド長として不甲斐無いですが、あなた達に託します。



>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


 ギルドから出て、地図に掛かれた洞窟の入り口へ建物と壁とを無視して真っ直ぐ突っ切る。

 屋根の上を跳び移り、クエストへ急ぐ。

 眼下では鎧を着た人、ローブを纏った人、武術家の様な人、探検家…………様々な人が各々覚悟を持った目でぞろぞろ城壁の入口へと向かっていくのが見える。

 あっちはあっちでスライム退治。

 こちらはアモンとリターンマッチ。

 疑似太陽は夜の闇を退け、煌々と輝き続けて肌を焼く。

 「テミスちゃん……………本当に良いの?」

 「うん、もう決めた。」

 テミスちゃんには選択肢を渡した。


 1.ギルドに残る。

 2.私と一緒に来る。


 「お姉ちゃんと一緒に行く。

 だって失敗したら逃げられないんでしょ?

 なら、私、行く。

 私も行って役に立ちたい。」

 脅してでも止めようかと思ったけど、それを言ったテミスちゃんには覚悟を決めた者の揺るぎない意思があった。

 あれは置いて行っても如何にかして連いてくる。

 もはや止められない。

 なにより、どちらに行っても擬似太陽が止まらなきゃほぼ確実にどっちの選択肢でも全滅する。

 拒否する理由がなかった。

 そして、私も心の奥底。自分でも解らない何かの直感…予感を感じてテミスちゃんを肯定してた。


 「到着。」

 目の前には外界と王都を隔てる巨壁が見える。

 この先を真っ直ぐ行くと、リターンマッチの会場入り口がある筈だ。

 「さて、準備万端……の前に。」

 懐に手を突っ込む。

 ガサゴソと探ると柔らかくて冷たい感触を捉えた。

 「ププププププププププ………」

 引っ張り出したのはゼリー……では無くて、隠れていたワイズスライムだった。

 「さ、私達はここから死地へと行くから、もうスラは自然にお帰り。

 スラの力なら今から逃げれば多分あの疑似太陽が落ちて来ても大丈夫でしょ?」

 「プププププ?」

 何か言いたげな顔……と言うか、スライムボディー。

 「これは私達の問題。巻き込む訳にはいかないの。

 折角拾った命なんだし、ま、安心安全に生きていくと良いよ。

 あ、ただ、人間には手を出さないでね。そうしないと私達の敵に成っちゃうから。」

 「ププープ。プププププププププププ」

 敢えて言おう。ここから先は死地。

 そう、ふと目を離せば隣りに居た死が自分に牙を向いて仕留めていた……そんな場所へ行く。


 「じゃね。」

 「ばいばいスライムさん。気をつけてね。」

 「プ……プー!」

 スラの言葉(?)を背にして私達は城壁を一ッ跳びに飛び越えて行った。

 ここから先は、紛れもない死地。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る