この間3分22秒


 他の荒っぽい方法に出た理由。

 先ず、他に方法が無い。

 戦力分散を強制される以上、どんなに分の悪い賭けでも、最適な人材をベットするしかない。

 私はスライムを倒せても、他の冒険者と足並みを揃えるのは連携の経験値的に難しい。

 魔法に関しては門外漢。まだストラップの方が役に立つ。

 なら、やっぱり一度闘った奴と殴り合うのが一番勝ちの目が有る。


 それに、この街には知り合いが何人も出来た。

 宿屋サバオリの人達。

 職人街の人達。

 ギルドの人達………。

 ここで逃げたら皆死ぬ。

 無様に逃げ出して見殺しにする。

 逃げられるか!

 こっちは皆に死んで欲しくないっての!



 そして、何よりの問題はリエさん本人。

 この手の覚悟を持ってる人は、最期まで人の為に足掻いてしまう。

 多分、スライムの包囲網を突破して、皆を逃がそうとして、最期までギルド職員として在る覚悟がある。

 死なせないよ。

 絶対死なせない。

 こっちにだって覚悟はあるんだから。



 アモンを殴り倒す。

 擬似太陽をどうにかする。

 スライムを倒す。

 犠牲者は出さない。


 これ全部を叶える。犠牲なんか許すか!

 「と言うことでギルド長。

 私達の役割と具体的手段が決まってるなら早く言って。

 リエさんは数分で目覚めるから。」

 リエさんを寝かしつけて手を叩く。

 呆気に取られてたギルド長が我に帰ったのが解った。

 私の意図に気が付いたようだ。

 「………はっ。

 今起こった『ギルド職員に対する冒険者の暴力案件』のことは渋々目を瞑るとして…、改めて貴女にして貰いたいことは主に三つ。

 一つ目、『地下洞窟の探索』二つ目、『原因と思しき対象の発見』三つ目、『対象に擬似太陽の即時破壊要求、又は対象の排除』以上です。」

 「洞窟には如何入れば良い?

 私達が通った場所はもう吹き飛んで熔けて無くなってる。」

 「ご心配無く。

 あの洞窟には外と繋がる道が二つ有ります。

 元々もう一つは人が入れない様な空気孔だったようですが、最近発生したポイズンスライムが通り抜けることで孔が広がり、火柱で完全に人が通れるサイズになっていることを確認しました。」

 「場所と周囲の状況は?」

 「ここに地図があります。

 城壁の外はスライムで溢れていますが、その一帯だけ不思議な事にモンスターが避けている様です。」

 「中の状況は?」

 「偵察を試みましたが、ノイズが酷くて全く……内状が解らないまま死地に送ることになり………面目無い。」

 「十二分。

 こちらは地図を貰い次第出発する。」

 「因みにどうやって城壁を超えるつもりですか?」

 「跳ぶ。周辺に通知お願いします。」

 「解りました。それでは……」

 「ちょっと行って来る。

 行こう、テミスちゃん。」

 「うん…………。」

 この間3分22秒。

 「リエさん、ごめんなさい。

 どうか私のした事を許さないで下さい。

 そして、帰って無事、私を叱って下さい。」

 気絶したリエさんに一言言いながら、私とテミスちゃんはその場を後にした。

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