太陽の正体


 「あぁ、ゴメンね二人共。こんな時間に来て貰っちゃって…………見ての通り、少しおかしな事になってて………ね……」

 明らかにギルド長が疲弊してる。

 目をパチパチさせながらこちらを見た。

 思案顔をしながら部屋に入る様に促す。

 会ったばかりの時は割と飄々としていた印象だったのに、ソレが無くなってる。

 不味いかもなぁ……マジで。

 「何があったんですか?」

 「ちょっとね………………大物が現れたみたいで…………んー………対処すべき問題が一つ、二つ、三つ………………。」

 目を瞑りながら指折り数える。

 指を折る度顔が少しだけ強張る。

 「何が起きてるんですか?」

 「先ず、当然解るだけど、僕が今回君達を呼び出した理由を言っておこう。」

 そう言って立ち上がりつつ顎を手で撫でる。

 「今回君達を呼び出したのは…先ず、上空に浮かんでいるあの超巨大攻撃魔術について。

 あれを近くで見てみたんだけど………少し、これを見て欲しい。」

 そう言うと、おもむろに人指し指で天井を指差したかと思えば、指先からホタル見たいな光を三つ出した。

 青白く、フワフワ綿毛の様に飛ぶソレは光っているけど、裏が透けている。あれは……虫とか電球の類じゃない、触れられないものだ。

 そんな事を考えている内に、フワフワしたソレが私とリエさん、テミスちゃんに近付いていき、頭にそれがふわりと触れると…………

 「!」「⁉」「これは………」

 急に頭の中に見た覚えの無い映像が流れ込んできた。

 上は真っ暗な空、目を焼きそうな太陽の光。下は騒ぐ人々、松明やオレンジ色の光で照らされた夜の街並み。そんな風景をフワフワと、空を飛ぶように見ていた。

 何か………酔っ払ったみたいな気分?平衡感覚と視覚が食い違ってるのが解る。

 手足は全く揺れ動かないのに、視界だけグルグルフワフワと揺れ動く状態………あっコレ、アレだ。3D映画見た後の3D酔いに似てる。

 「僕が情報収集で色々集めた結果を今、皆さんにお見せしています。

 少し変な気分になるかもしれないですけど…ごめんなさい。少し、我慢して下さい。」

 ギルド長がそう言うと映像が動いた。

 さっき迄地面と平行に動いていた視界が上へ上へと昇っていく。

 その先には眩い太陽………みたいな何か。

 遥か彼方、空にある天体に向かって近付いて行く。

 視界は徐々に地面を離れ、空へと近づき、太陽はどんどん大きく、輝きを増していく………………………あれ?

 太陽が、大きくなっている?

 「ギルド長さん。」

 相変わらず視覚は在りもしない風景を映しているが、声帯を震わせると自分の声はハッキリと聞こえる。

 「何だい?」

 ギルド長の声がそれに応えてくれる。

 「昼間に空に浮かんでいたあの巨大な光。アレは私の故郷だと『太陽』って言うんです。」

 「はい、こちらでも太陽と言いますよ。

 それが、何か問題が有りましたか?」

 「私の故郷だと、あの光源は地面から滅茶苦茶離れてて、その上クソデカい。

 ちょっとやそっと飛んだり跳ねたり重力無視して走ったりした所でアレに近付いた気にはならないし、光源が大きくなる訳無いんです。」

 「こちらでもそうですね。

 太陽に近付こうとした者は幾らも居ますが、辿り着いた者は居ません。

 アレは凄まじく巨大なモノの象徴であり、遥か彼方先にあるモノの象徴でもあります。」

 「今見てる景色って……さっき…又は今のこの都市の景色ですよね?」

 「えぇ。そうです……。流石に解りますか。」

 やっぱりそうだ。って事は…………。

 「じゃぁ………あの太陽……モドキ。

 割と近くに、それこそ雲よりも近い場所に……有るって事ですよね……?」

 「…………はい。問題はソコです。」

 その声は少し重く、真剣な面持ち…見えないけどそんな表情だと思った。


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