千里眼の真
いきなり高台から飛び降りつつ、何をするかと思えば回転しつつ捻りを加えて縦横斜めと重力があちらこちらから引っ張って来る。
しかも、眼に見える光景は今まで見たものの中では有り得ない程情報過多で狂気的。
身の危険を感じて、思わず
頭が大量の情報によってオーバーヒートし、平衡感覚を維持していられない。
「アガぁッウッァァァァぁぁ………」
凄まじい吐き気と共に地面に崩れ落ちる。
床を汚さなかったのは辛うじて……ってところかな?
「ギルド長?どうかしましたか?」
扉の向こうからリエさんが心配そうな声をかけて来る。
「あぁ……大丈夫ですよ。
入って下さい。」
未だ頭を揺さぶられた後遺症は残っているけど、そこはギルド長としての意地。やせ我慢で押し通す。
あー…まだせかいがグルグルしてあたまがいたい
「ギルド長さん、大丈夫?」
リエさんが入って来るのに続いてテミスお嬢さんも入って来た。
あぁ、そう言えばさっきリエ君に頼んでたっけ……。
「ん?大丈夫だよ。それよりも…忘れ物かな?
あ、さっきの
フラフラしつつもウインクして誤魔化す。
「実は、先程八華さんが『テミスちゃんをここで少し預かって欲しい』と言って外に出て行ったんです。
現状が現状なので一番安全なこちらで預かって貰えないかと……。」
申し訳なさそうにリエ君がこちらを見る。
まぁ、ギルド登録の時に誘拐された件といい、スライム核の盗難の件といい、この子をギルドのテーブルで待たせるのは不味い。
かと言って、事務所は一連の騒動でごった返して不味い。
そうしたら……僕の所が一番安全だよね。
個室だし、僕ギルド長だし。
「良いでしょう、テミスお嬢さんはギルド長流の最高のおもてなしで迎えましょう……と言いたいところだけど、もう直ぐ八坂さんは帰って……」
「お待たせテミスちゃん!ゴメン!帰ろう。」
後ろの窓から首を出したヒロインが颯爽と現れた。
そんなこんなでテミス嬢、八華嬢が帰り、リエ君が仕事に戻る。
一人になったギルド長室で椅子にもたれかかって大きく息を吐く。
「いやぁ、にしても、ショックだなぁ。
見た所魔力も無いのに、アレに直感で気付いて、破って来るなんて…………。」
ギルド長は純粋に自分の能力を破った八坂八華という新米冒険者に感心していた。
ギルド長、ガービス。通り名は『千里眼のガービス』。
彼の能力は千里眼……では無い。
彼の能力、それは
条件を満たした相手の視界を覗く…というモノだ。
他にも、逆にこちらの視界を相手に強制的に覗かせて視界を封じる事や、見えないものを見せたり、見えるものを見えなくしたりする事も出来る。
弱点は、複数人にこの能力を行使したり、激しい眼球運動を行っている相手の視界を覗いたり、そもそも眼球や視覚の構造が違い過ぎる相手に使うと、情報量で頭がオーバーヒートする。
彼が先程失神しかけていたのはこれが原因。要は情報過多の映像を見せつけられて目を回した訳だ。
ちなみに、相手の眼を見て発動する系の能力をこの能力越しに喰らった場合、直視の時よりは効果が薄いものの、影響を受ける。
ギルド長は、これを複数の人間に行う事で街中に自身の眼を放ち、情報を集めていた。
ギルド長が八華一向の『狸オヤジ』のくだりを知っていたのはそれぞれの視界をこの能力で見て、読唇術を使って会話を見たからだ。
何故、炎熱の精霊、アモンについて知っていたか?何故、ワイズスライムについて見破ったか?
それは文字数の関係で、次話、話すとしよう。
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後書き
某○○○ボックスを知っている方は「『欲視カ』じゃないか!」とおもうかもしれませんが、違います。
あれは謂わば他人の視覚のハッキングと受信。
こちらの侵眼通は視覚のハッキングと受信、送信。
彼方よりも出来る事は多いです。(ただし、燃費はこちらの方が悪い。)
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