お菓子と帰路と見ているなッ!
「じゃ、私達は準備するから。
で、ケリ……着けるね。」
闘志は十二分。さて………やるか。
「お願いします……健闘を祈ります。」
私と、もう既に目が半分眠っているテミスちゃんがドアを開けて出て行こうとするのを、手を振って笑いながら見送るギルド長。
ドアを閉めようとして………その手を…………止めた。
「そう言えば、ギルド長。」
「……何ですか?」
「私達のスライム核を盗んだ……って話を聞いたんですけど、その件、どうなっているか教えて貰えます?
別に急ぎじゃ無いので、この件が終わった後でこっちでも調べてみようかな?って。」
コッチは代金を貰ってるから利益的な損失は無い。
けど、
もし、あの核を悪用されて、悪用された
私は、鬼にならないといけない。
「ん~…残念ながら。
その件も並行して進めてるけど、………目撃者が全然居ないんだよね。
ちょっと、きな臭いから気をつけて下さいね。」
「…………解りました。じゃ!今日はもう寝ます!
気をつけます。では!」
「あっ!待って待って待って!」
ハッとした顔で慌てて立ち上がる。
「重要な事忘れてた!」
そう言いつつこちらにつかつかと足早にやって来る。
そうして……
「?」「?」
「秘蔵のお茶菓子!テミスお嬢さんに。これ。」
そう言って懐から植物の皮に包まれた塊を取り出し、テミスちゃんの手に載せた。
「仕事の合間にコッソリ食べる、僕のとっておき。
ギルドの他の人にも渡していないとっておきだから。トモダチト、コッソリネ。」
テミスちゃんに小声でそう言ってウインクする。
「うん…、有り難う御座います 。ギルド長さん…。」
「宜しい。礼儀正しいのは良い事だ。
蔑ろにされがちだけど、僕達冒険者は礼儀を重んじるべき人だからね。
テミスちゃん、僕は君に敬意を表そう。冒険者にまつわる事で何か有ったら、リエさんと僕に言って欲しい。力になろう。」
「うん。」
「おっと、もうこんな時間か。ゴメンネ二人共。じぁ、おやすみなさい。
夜道は気をつけてね。」
眼の奥まで透き通る様に澄んだ目で笑ってそう言い、今度こそ、扉が閉まった。
夜の街。あたりはもう真っ暗。
人通りは少しずつ減っている様で、あちこちの家から灯りと談笑、夕飯の匂いが漂って来る。
お腹はグーグー鳴る。今晩の夕ご飯はなんだろうな?
一日の密度が濃過ぎたのか、テミスちゃんはフラフラ。
私?私はまだまだ。余裕一杯。少なくとも………監視者を見つけてとっ捕まえる位の余裕なら、タンマリある。
敢えて言おう。
「何処の誰かも解らぬ馬の骨。貴様、見ているなッ!」
何かに、見られている。
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