貴様!見ているなッ!


 「あの、私、レベル1の冒険者ですよ?」

 「知ってますよ?

 僕、ギルド長。冒険者の最終チェックは僕の仕事。」

 私の困惑顔…というか『何言ってんだ?』という抗議の表情ににっこり笑って返す。

 「基本的な知識とか、探索とか調査とか、決定的に私には欠けてますよ?

 そんなのを未知の現場に放り込むのは流石にマズいんじゃ無いですか?

 他の人だって納得しないでしょう?」

 ランク上の冒険者やらギルドの人間やら、しがらみがこの世界にもあって然るべき。だったら僻む連中が居たっておかしくない…じゃなくっていて居ないといけない。

 調査の為に冒険者を何人薙ぎ倒さなくっちゃいけないの?

 「そうは言っても、優秀な冒険者をランクとかしがらみなんていうモノで遊ばせておく程僕は余裕が有る訳じゃないからね…。

 僕自身が出張ってどうにかなるなら出るんだけど、どうも今回の相手はね…僕と相性が悪いみたいだから………。

 ランクとかしがらみは任せておいて。その程度なら捻じ伏せられる位には権力有るから。」

 優男が自信満々にそう言った。

 「実力と言っても………スライムをただ倒しただけですよ?」

 嘘じゃない。スライムだけだ。

 それに対してギルド長は笑って返す。

 「スライムの大軍相手に生き残って、挙句に倒して、十分な実力でしょ?

 その内訳には変異種も居るし、それに…………………他にも闘ったでしょ?火とか。」

 優男が豹変した。

 知ってる。

 コイツ、やっぱり何か

 さっきから言葉の端々に、私達が口にしてもいない情報を盛り込んでる。

 リエさん由来かな?とも思ったけど、リエさんも知る訳が無い情報が漏れ出てる!

 何処で知った?アモンの事はデリードさんの所でしか話して無い筈!

 でもって、デリードさんは流出させるメリットが無いし、そもそもこの時間でそんな伝言出来ない。

 「何故それを………?」

 「ん?まぁそれ位なら解ったよ?

 あ、あと、ギルドにスライムを隠して連れて来るのは感心しないよ?討伐の対象になる。

 これでもワイズよりは強いんだから。勘違いして倒す事だってあり得るんだから。」

 やっぱりこの男!

 拳を固める。何?得体が知れなさ過ぎる!

 「あー!待って待って!拳仕舞って!流石にそこまで強くはないから!

 隠し事されてるのがちょっとイヤだったからからかっただけなんだって!」

 両手の平を胸の前でヒラヒラして敵意の無い事を表わす。

 さっきから敵意が無い事は解ってる。

 でも、

 この男の正体が、心眼の正体が解らない!

 心を読む?ウチの周りにも明らかに未来予知じみた事する連中は居るよ?でも、それは観察とか、体に染みついた動きへの反射だ。

 こんな明確に様なモノじゃない!

 性質が、違い過ぎる!

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