敢えて悪手に飛び込むヒロイン(?)

 <<リエさんのスライム集中講座>>

 スライムは環境によって変質をする環境相関型生物である。

 環境に応じてスライムはその在り方を変え、例えば高温地帯と寒帯地帯でスライムを比べた時に、その在り方は別の生物と言っても過言では無い。

 つまり、スライムを見ればその近辺の環境をある程度予測する事が出来、その地域に元々生息するスライムの性質が変化した場合、環境の大きな変化等が発生している可能性も考える事が出来る。

 環境魔法学を学ぶ際、先ず教わる基本は、『今居る場所の環境を知りたければ、その辺に居るスライムを10匹捕まえて調べろ。』と言われ、俗に『スライム環境テスト』とも呼ばれる。

それだけ環境を如実に表す生物であり、同時に、その核は日常~大規模産業まで幅広く意味を

持っている。

 スライム自体の傾向に依存して加工の向き不向きが有るものの、核を加工して薬剤や魔法を使用出来る魔道具や鎧の材料になる。因みに、この向き不向きは元になったスライムの性質に依存する。

 つまり、環境と産業に密接な繋がりが有るので、ある程度熟練した商人は、遠方のスライム核の加工品を見て遠方の需要や環境、その他の状況を類推する事が出来る。この方法は環境魔法学のスライム環境テストに対して『スライム流通分析』と言い、『スライム流通分析の分析精度の高さで商人としての熟練度が有る程度計測出来る』とまで言われる事がある。

<<講義一部抜粋&中略>>


 つまり、あの場にはスライムを猛毒化させるだけの劇物の類が無ければならない。

 で、都市部にそんな物騒なモノが普段から有ったら大問題になるし、多分然るべき処置や調査がされている筈。

 それが成されていないって事は、毒は最近になって発生したって事。オマケに言えば、他のスライムもこの辺に居る筈が無い種類だったことを考えると、何かしらの環境全体の変化が有ったって事。

 今ならその原因が解る気がする。

 あの炎の精霊、アモンだ。

 毒……洞窟を吹き飛ばしたあの爆発の原因。一酸化炭素。アレだって一般的には割と劇物だ。

 リエさんの猛講義(誤字にあらず)を参考にすればあの猛毒性はあり得る。

 「この辺りのスライムは、草むらをあんな風に枯らす毒は本来持ってないし、何より、あんな危険な奴を野放しにする訳にもいかない。

 ギルド長として、冒険者の一人として、然るべき措置を取らないといけない……。

 という事で、実際に出会って、見て、聞いて、触れた君を呼んだ……というワケさ………。

 どうやら猛毒スライムの他にも幾つか変異種が出たみたいだし、対策を取らないとね。

 本来なら君が持ってきてくれたスライムの核を分析すれば良い話なんだけど……どうやら紛失があって、しかも、情けない事に今はその調査に人材を割けない状況に在る……。虫のいい話だと思うがどうか、助けて欲しい。」

 頭を下げた後、真っ直ぐ、澄んだ目でこちらを正視する。


 得体の知れなさは有る。

 アモンの件に直結するからここに長居するのは悪手。

 そもそも、この男の心眼(仮)の正体が掴めないのに長居はこちらが不利。


 「解りました。

 私達が知ってる事で良ければ話します。」

 ただ、悪手だからと言って、危険を放置してみすみす誰かを危険に曝すのはゴメンだ。

 スライムの件は洗いざらい話して対策を立てて貰おう。



 ま、色々バレた時は城の時と同じ様に握り潰す(物理)すればイイんだしね!



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