え?貰ったのに?

 道具街を三人(+スライム)で歩きながら、私達はギルドに向かっていた。



 「大変申し訳ありません!

 つい先程、お二人がギルドに持ち込んだスライムの核が無くなっていることが発覚しました。」

 工房で聞いたのは先ずそれ。

 どうやら、昼間に倒したスライム核がごっそり無くなったらしい。

 もっと言えば、『そもそもそんなもの』事にされていたらしい。

 「ギルドのシステムとして、冒険者から頂いた依頼の品と報酬は矛盾無いように、キッチリ帳簿に書き記されます。

 矛盾が少しでも有れば、ギルドの職員が気付いて大事になります。

 ですから、対価となる品物無しで報酬を受け取ったり、品物を受け取ったのに報酬を渡さなかったりすることは有り得ません。

 ただ、今日、少し厄介な事が起きまして……」

 (サッ)

 テミスちゃんが視線をリエさんから反らす。

 私も一瞬ギクリとした。

 多分…アレか…。

 「それって炎上…「帳簿に矛盾が無いんです!」

 ギリギリのところで口をつぐんだ。

 「何か言いました?」

 「いいえ何も!続けてください。矛盾が無いって?」

 危なっ!自爆するトコだった!


 「それが、ギルドの帳簿を見る限りでは、お二人が今日、ギルドに来たという記録は無いんです。

 スライムの核が持ち込まれた記録も無く、倉庫を探してもそれらしい物品も無く、当然こちらが対価を支払った記録も…。」

 「?じゃぁ、何で私達が来たって解ったんですか?」

 「それは、お二人がギルドに来た事を証言してくれた人が居たんです。『今日来た女の子2人が凄い数のスライムの核を持って来てたが、あの娘達は何なんだ?』と。

 そこで、私がお二人を調べたところ、来た形跡も、スライムの核も無く…。他にそんな量の核を持ち込む方に心当たりが無く…」

 「紛失に気付いたと…………………?」

 「はい、先程まで郊外で起きた謎の火災の処理忙しく…この時間に……。」

 (あ、やっぱそれ?)

 テミスちゃんと顔を見合わせる。

 先ず、火災の事をアイコンタクトで黙る事を合図。その後首を傾げて尋ねる。

 テミスちゃんの方も小首を傾げてた。

 「「じゃぁ、私達が貰った報酬って……何?」」

 それを聞いたリエさんが今度は目を丸くしたり困惑をしたりし始めた。

 「どういう事です!?」




 今日、スライムの核を換金したのは覚えてる?

 あの猛毒のスライム相手にやり合った後の話。

 あの時、私は確かに依頼達成して貰い、その対価を貰った。

 その後で道具街に行って依頼を受けたんだから間違いない。

 「ちゃんと依頼の報酬貰いましたよ?ねぇ?」

 私の言葉にテミスちゃんがコクコクと首を縦に振って同意する。

 「そう…ですか。解りました。

 では、その件は後程こちらで確認します。

 ただ、問題はもう1つ有ります。」

 「そう言えば、私達はギルドで何をするんですか?」

 「これも…私達の不手際なのですが、今日2人が出会った…闘ったスライムについて、ギルドの長が訊きたいと言っているのです。」

 「ギルド長?」


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