火の精霊と叡智を授ける我らが先生
「確かに、今までのとはちょっと違ったよね。」
こう……何と言うか、血沸くというか…肉躍るというか……まぁ実際、熱で血どころか全身沸騰してもおかしくなかったんだけどね!
「頼んだこちらが言うのも何だが……ちょっとどうなんじゃろうか~?
大国の首都を炭にした事がある輩相手にそれですませちゃ……な~……………。」
「おじいちゃん、諦めて。お姉ちゃんはこれが普通だから。」
ん?そう言えば………。
「デリードさん、そう言えばそれは……何?」
指を指したのはデリードさんが持って来た、アモンが描かれた紙。
鍛冶に生きる人間にとって炎が縁深いのは解る。というか、炎無しで鍛冶って出来なくない?
それはそれとして、じゃぁそんな物騒な化生を描いたシロモノ……何で持ってるの?
ブッソウ過ぎない?あんな怪物絵を鍛冶場に置くのって…。
「あ~、これな~。これは子どもの教育用の絵本だ~。
正直、コレはアモンじゃなくて………アモンの形をした怖がらせ用の絵だ~。本当にこんな事はしない。
要は……これは嘘っぱちだな~。」
「「…………………………え?」」
テミスちゃんも私も唖然とする。
え?今までの感じからして、アモンって明らかに都市とか人とか灰燼にする悪の大魔王的なのっぽいヤツじゃない?
「アモンは炎熱の精霊。同時に叡智を操る精霊でもある。
聡明で思慮深い。人間を相手に無差別に人殺しをしたり、いきなり襲い掛かったりする様な非道や凶行をしやしない。
どころか人々に鍛冶を教えてくれたと言われて、鍛冶の祖として崇められている。
だから、鍛冶に関わる人間は『アモン』の名を聞けば泣いて喜ぶし、学び舎の人間もアモンをお守りにする事だってある。」
「え……都市一個炭にした事があるって………………」
「したことは実際に有る。
が………死者は居らなんだ。」
「??????」
「昔……と言っても、儂が若い頃の話じゃがの~、精霊を人為的に呼ぼうとする『人工精霊創生実験』というモノが流行っての~。それをとある国が成功させたんじゃが…………呼び出した精霊がアモンでの~。色々アホな事して呼び出したことがバレて、人間以外の設備を焼いたらしい。
人間は一人も焼かずに……の~。」
あ~………大体察した。
大概何処の組織の中枢も、大きな力を欲しがって馬鹿な実験やら何やらをよくやらかす。
で、それを見てキレたアモンが二度と同じようなバカが出来ない様に焼いたと………。
まー…解る。
いきなり異世界に誘拐されて、しかも、誘拐の為に子どもを何人も誘拐して、多分それ以外にもロクでも無い事をしている事が想像出来たら……まぁ、最低でもその組織が二度と同じ事やらない様に〆る位はするよね?
で、誘拐された子とか、無関係の人間を巻き添えにするのは流石にダメだと思うよね。
「だから…………の~。」
デリードさんは頭をポリポリ掻いて目を瞑った。
「お姉ちゃんを襲うような人じゃない?」
「ん~……。
悪意が有って近付いた訳で無し、ただ近寄っただけで襲い掛かるなんて話は……と~んと聞かんの~。
寧ろ智慧やら何やらを授けてくれる話を聞いた 」
「あ!見つけましたよ!」
デリードさんの言葉を遮った人が居た。
この声ッ!
「はい!スライムはその特性上環境に適応して細分化し!その魔石は貴重な加工資源になる事もあります!」
「ハイ!スライムは天井とか隙間とかに隠れられるから洞窟とか街とかだと強いから気を付けます!」
スライムの教え。
思わず私とテミスちゃんが反射的にその場でスライム知識を復唱する。
「良く出来ましたお二人共。………じゃなくて!お二人共来て下さい!大事件です!ギルドまで同行して下さい!」
鍛冶場に来たのは、我らが先生、リエさんだった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます