スライム追いかけ洞窟地下へ。マジヤバ系と取っ組み合いしてました。
一通りデリードさんは黙って聞き終えると、目を瞑って一息。
目を開けて、
「待ってな~。」
と言葉を残して工房の奥へと消えていった。
「そんな事が有ったんだ…………」
デリードさんの足音が消えると、真剣とも、険しいともちょっと違う、なんとも言えない表情でテミスちゃんがそう呟いた。
「嬢ちゃん達が合った奴は火を使ったんだな~?」
奥から戻って来ると、手に丸まった紙を持ってそう訊いて来た。
「間違い無いです。」
「名前は、『アモン』って名乗ったんだよな~?」
「間違い無く。」
「頭が鳥で、牙が有って、蛇を体に巻き付けていたんだな~?」
「それも、そうです。」
質問に答える度に、徐々にデリードさんの顔が難しくなっていく。
僅かな差異だけど、もしかして…まぁもしかしなくても厄ネタっぽいな。
「これを見て貰えるか?」
険しい顔で手に持っていた紙を近場に合った鉄製の机に広げる。
テミスちゃんと私がそれを覗き込むと、そこには見覚えの有るものが居た。
撹拌された泥水の様な、曇天。
その下にはカッと見開かれた、血走る眼。
口を大きく開けて乱雑に生えた針の様な牙。
体に巻き付いた蛇も毒牙と舌を剥き出しに威嚇している。
そんな足元には幾つもの生き物の死骸と思しきモノが転がり、積み上がり、燃える背景と屍の山の中でそれは立っていた。
ちょっとホラー補正が入っているけど、さっき迄殴り合っていた相手を間違えはしない。
アモンだ!
「鍛冶をやる人間なら誰だって知ってる。
それが炎熱を司る高位精霊。アモン。」
私の反応で、洞窟で何があったかを悟ったデリードさん。
私達の知らない事を結構な数、教えてくれた。
先ず、精霊について。
精霊というのは、この世界のあちこちに在る魔法の力、『魔力』が何らかの原因で集まって塊になり、指向性と自我を持った存在らしい。
例えば、私が殴り合ったアモンは炎熱の魔力が集まり、それが自我を得てああなったらしい。
で、その精霊にもピンキリがいるらしくて、火の精霊なら、『マッチ一本分の火が集まって自我を形成した『下位精霊』』と『都市一個を灰燼に変える火が結集して自我を持った『高位精霊』』。みたいにランクがある。って話。
要は、あのアモンは都市一個を炭に出来るヤバい系の奴って事。
デリードさん曰く、『アモンは国一番の冒険者が集まっても場合によっては返り討ちも有り得る最高位精霊』らしい。
『スライム追いかけ洞窟地下へ。マジヤバ系と取っ組み合いしてました。』
なんてラノベタイトルっぽい話だね。この状況。
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