洞窟が吹き飛ぶお話
「お~。大丈夫だったみたいだな~。」
腰を抜かした職人が職人を呼んで軽く連鎖的に驚いている職人’sにテミスちゃんが拾った石の袋を置き、デリードさんの工房へ向かうと、特に驚きもせず出迎えてくれた。
「驚かないんですか?」
火柱の件はこちらにも伝わってる筈。何かしらの反応が返ってくると踏んでたけど……。
見た感じ全然動揺も何も無い。
刀匠の鍛えた刀宜しく、ただそこに、揺らぎ無く、自然体だった。
「あ~。まぁな~。
火の粉の一つ二つで焦げる様な、ましてや怪我する様な柔なモノは渡してないからな~。」
成程、火の粉程度じゃ傷一つ付く訳が無いって事ね。
アレを火の粉……。
「嬢ちゃんも、あの程度じゃぁくたばらんし、直接喰らっていても、火傷。せんじゃろう?」
「それはまぁ。」
アレで火傷していたら、命なんて人生でする呼吸の数くらいあっても足りない。
「そんな訳で、事情、聴かせて貰えんか~?
あぁ、初めに言っておくが、この街に居る人間で、怒る者は絶対に居ない。むしろ感謝さえしとる。」
少し面喰った。
実を言えば、事情を話す前に謝らないといけないと思っていた。
結局のところ、ドヤ顔なんてしてたけど、私達は依頼されたクエストに大失敗した訳だ。
『クエスト概要:王都郊外の魔石の洞窟のスライム退治&魔石の採集。』
これは採掘が再開出来て、加工を再開出来る様にする事が目的。そして、退治はあくまで手段。
洞窟が溶けてマトモに入れないんじゃ本末転倒も良い所だ。
職人は優れた目を持っていると思う。
自分の創り出す物を観察して見抜けないとより良い物なんて創れこっこないと思うから。
「先手取られた。」
「この辺の鍛冶バカ共がうっかり足を踏み入れていたら無事では済まなかった。
そして、そんな危険な場所に送り込んだ事。すまん。」
頭を下げられた。
「おじいちゃん。頭を上げて。」
そんなデリードさんに声を掛けたのはテミスちゃんだった。
「おじいちゃんのお陰で、私は怪我しないで帰ってこれた。
お姉ちゃんもケガして無いって言ってる。
だから、ね?頭を上げて。
おじいちゃん、ありがとう。」
頭を下げていたデリードさんがテミスちゃんに促されて頭を上げる。
「そうか…………すま……ありがとうの~。」
元の好々爺が顔を出した。
「じゃぁ、スマンが、何が有ったか、何が在ったか、何に会ったか、教えてくれんかの~?」
洞窟に入ってからの事をある程度説明する。
スライムの事、地下に有った変な場所の事、あの燃焼マン……もとい、アモンだっけ?の事。
あ、因みに、あのスライムは色々と面倒事を回避する為にテミスちゃんのポンチョの中に隠れて貰っている。
そんな訳で、話は進んで。
一体何で洞窟が吹き飛んだのかについて話し始める事にするよ。
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