職人が困惑し、ヒロイン(?)がドヤ顔をし、ヒロインは苦笑した。


 「さて……報告報告っと……。」

 城壁の根元に位置する道具街は、陽が直ぐに落ちて、既に薄暗くなってきていた。

 しかし、それでも地上の火は消えてない。

 あちこちでカンカンと金属を鍛える音がして、炉の火が輝いている。

 ここまで辿り着くのに割と回り道しちゃったから時間がかかった。というのも………

 「オゥ、嬢ちゃん達!帰って来てたか!」

 誰に声を掛けて良いか迷ってウロウロしてると、職人の人がこっちに声を掛けてくれた。

 「オゥ皆!嬢ちゃんが帰って来たぞ!」

 一声掛けると道端の職人の目がことごとく此方に向き、工房から頭をひょっこりと出す職人も現れた。

 「ごめんなさい。洞窟が…」

 「洞窟が吹っ飛んだって聞いたがよ!大丈夫か?」

 情報がここまで来てた。回り道には一応無意味では無かったらしい。

 「シベリーが飛んできてよ。魔石の洞窟からお嬢ちゃん二人が慌てて飛び出て来て、その後直ぐに洞窟が火を吹いたって聞いた時は肝ぉつぶしたぜ。

 直ぐに二人だって解ったからなぁ。」

 流石に洞窟の火柱は目に付く。

 で、その近くで可憐な少女二人が目撃されたのなら…確実に目立つよね?

 で、その情報は直ぐに駆け巡って、近場の城壁の入出管理記録を照合。二人組で可憐な少女の行方は知れちゃう。

 目立ったらそれはお尋ね者にとって致命的。って事で、少し回り道をして、出た時とは違う所から壁の中に入っていった……って訳。

 まぁ、目を付けられたのは避けられなかったけど、『まだこの街に城堕としの犯人が居る』って位の情報しか掴ませていないから……ギリギリセーフかな?

 アウトだったらだったで……また今度。城を堕としちゃおう!今度は外側から!

 「お姉ちゃん、何か悪い事考えてない?」

 「え?別に。大した事は考えてないよ?」

 テミスちゃんが疑いの目を向ける。

 「お姉ちゃんの『大した事』って…どの程度から大した事?」

 「うーん………私がやったってバレて、怒られて、大した事だって私が思ったら?」

 「それ、バレなきゃ大した事じゃ無いって事だよね?思わなかったら別に大した事じゃ無いって事だよね?」

 「フ~…フ~…フ~…」

 「口笛、吹けてないよ?」

 テミスちゃんの視線が刺さる。

 「まぁ、無事だったんならそれで良い。

 俺から皆に無事だって事は伝えておく。

 悪かったな。無駄足踏ませるどころか危険な目に遭わせて………。

 詳しい事情はデリードさんにでも……………」

 ドサァッ!

 ギッシリと魔石の詰まった袋を目の前に投げ出す。

 縛ってあった口が開き、石がゴロゴロ転がり落ちる。

 「…………………………………!…………?…………………⁉」

 「………………………(*`▽´*)ドヤァ!」

 「(^_^;)……………………………。」

 困惑する職人。

 ドヤ顔な私。

 苦笑するテミスちゃん。


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