魔人VSヒロイン? ~火の鳥~

『廻し受け』

炎の塊を体の前で高速回転させた手の平で掻き消す。

完全に決まった廻し受けのお陰で火の粉一つ降り掛からないし、火傷も無し。それでも熱は感じるから、どのくらいの火力かは解る。

控えめに言って人体が炭化するね。コレ。

どんなモノ燃やしたらこの火力出るの?何焼くのに使うのこの火力?ってレベル。

威圧感が殺意に変わった段階で目に見えてたけど……当選の如く私を殺る気満々だよ?遺体遺骨を隠滅して完全犯罪決める気満々だよ?あの謎大魔人。

私だって誘拐された時に膝蹴りを挨拶で喰らわせたけど、運が死ぬほど悪いと死ねるくらい痛いレベルでしか蹴ってない。手は抜いてた。

目の前の相手。縄張り荒らした象なんか目じゃないくらいキレてるじゃん!

言葉通じてるけど、不法侵入(洞窟への侵入がそれに当たるかは解らないけど)で相手を灰塵に変えようとする辺り、容赦と手加減無いじゃん!!

危ない危ない。コレ、下手に素人が首突っ込んでたら突っ込んだ首どころか繋がってる手足ごとウェルダンにされてた!!

まぁそれはそれとして…

「願いとか望みとか、そんな事私にはどうでも良い。

私はアンタのその面に挨拶噛ましたいだけ!!望みなんざぁ叶えんでも良いよ?勝手にぶん殴る

からナァ!」

「待っていない。お前は待っていない!」

さっきと同じくらいの炎の塊が、今度は20個近く謎魔人の周囲にフワフワ浮き上がった…と思うと同時にこちらに飛んで来た。

火力は多分同じ。目を凝らして見ると、暗闇の中で陽炎を生み出しながら炎がこちらに襲来してきている。

『廻し受け』

数で押し切ろうなんて考えてるなら悪手よ!

弾丸だってコレで凌ぐんだから、炎位なら手で空を切って風圧で直触りしない様にすればどうって事無い。

まぁ、相手もそんな簡単な事、解っていたみたいで……

「灼けろ。燃鳥バーンバード!」

全身から炎を吹き出し、炎が体から離れて生き物みたいに動き始めた。

最初は火の玉だったのが、徐々に形を変え、翼、クチバシといった形を成し始めた。

『火の鳥』

青い鳥以上に珍しい存在だけど、日本人なら青い鳥以上によく知ってるアレが、目の前の謎魔人の体から生み出されてる!

「感動的経験だけど、そんな悠長な事言ってらんないみたいね!」

まぁ、名前からして明らかに解るよね。

炎の鳥が、本物の鳥みたいに羽ばたき、洞窟の中を緩やかに、私の周りを旋回する様に飛び回って来た。

囲まれた。

「お前は待っていない。疾く消え失せろ。」

冷たく、低く、淡々と、私に侮蔑の目を向けて謎魔人がそう言った。


次の瞬間、旋回していた鳥の輪が急に狭まり始めた。

百腕魔人ヘカトンケイルラッシュ……じゃぁ不定形相手は無理かな?灼熱の鳥が、全方位から私に襲い掛かって来た。


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