魔人VSヒロイン ~それは紛れも無くヤツさ~


洞窟内に太陽が現れ、轟音と熱風が吹き荒れる。

洞窟の壁や天井が熱で溶かされて出来たマグマが滴る。

「灰塵と化せ。招かれざる者。

お前は喚ばれていない。私の孤独を破るだけの力も無い。

自分の愚かさと無力さを精々呪え。」

轟々と音を立てて燃え上がる火を見て彼(?)は言った。


ユラリ


背を向けて去ろうとしたその時、火が揺らいだ。

「?」

気のせいか?勘違いか?幻が見えたのか?否、違う。

小さかった火の揺らぎは広がり、渦巻き、大きくなり、火の中に黒いシルエットが浮かび上がり…………

「熱っ!!普通この火力ハナからぶつける?天井とか地面とか溶けてるじゃない!!」

両の手の中で何かを唸らせながら、シルエットが火を割って中から出て来た。

「ヒロインは死なんよ。何度でも甦るんだから!!」

不死鳥系ヒロインが現れた。






火の鳥に囲まれた私が取った行動。

さっきも言ったと思うけど、(具体的には前話最後)ヘカトンケイルは不定形な火との相性が悪い。 アルゴスと組み合わせて撃ち落とす事は出来るけど、火の粉一つ通さないのは難しい。

回転の風圧で吹き飛ばそうにも、明らかにホーミング(軌道可変)する感じだし、頭から足下から焼かれたりしたら最悪詰む。

例え1手目を耐えられても2手目への対応が間に合わない。

かと言って、両の手で廻し受けしたのでは到底間に合わない。

だからこそ。

『抜バール』

背中から得物を引き抜いた。

両手に掴むは超重量、高融点の名状しがたい略奪と破壊の象徴。 それを手の中で高速回転させ、全方位からやって来る火の鳥を片っ端から鶏挽き肉にしていった。 バールが生み出す空気の流れが回す手を守りつつ、挽き肉(火)を量産していく。

そんな訳で…

「この柔肌… 火 傷 一 つ 無い! あの程度で私を殺れる訳無いでしょーが!!」

無傷のまま火の中から現れたって訳。

「……訂正しよう。少なくともほんの僅か、私の悠久の虚無の、ほんの刹那だけを打ち砕く事が出来るかもしれない。」

さっきから目の前の謎魔人の言い方が気に喰わない。

なんか諦めた様な、人を醒めた目で見ている様な、機械的な……炎バラ撒いているのに全然熱意が無いっていうか………。

諦めていないのに諦めているフリしている感じっていうか…………。

「ウジウジしてて鬱陶しい‼」

後ろで燻っていた火の鳥の燃え残りを、バールの風圧で掻き消す。

「一発ブン殴らせろ!少なくとも焼肉にされかけた分はブン殴る!」

バールを構える。

謎魔人は構えもせず、首に巻いている蛇も大して警戒心を抱いていない。

暇潰しなんざさせん。ガチでブチのめす!

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