座す火炎
パチパチパチパチ…………
乾いた音が洞窟に響く。
暗い筈の洞窟に明かりをもたらし、動く影を壁に映し出す。
スライムや他のモンスターは影も形も無い。
カチッ
「違う。」
ゴロン
「これはそう。」
コロコロコロコロ……
「これは、そう。」
松明を近くの岩の隙間に挟み、手に持った魔石と地面に転がった石を見比べる。
見本と同じなら袋へ、違う物はまた地面へ。
これを黙々とこなしていた。
その甲斐有ってか、貰った袋と持っていたスライム用の袋が2つ、石で一杯になっていた。
これを材料不足の職人が見たら、確実に拾いに行った2人を拝むだろう。
カチッ
「違う。」
ゴロン
「これはそう。」
コロコロコロコロ……
「これは、そう。」
ゴロリ
「違う。これじゃ足りない。」
手に握った石ころを明かりの届かない所へと投げ飛ばす。
カチッ!!
暗闇から乾いた音が響く。
近くには地面に空いた穴がポッカリ。
下からパンパンと奇妙な音が響いてくるが、石拾いをしている少女の耳には届かない。
一心不乱・一意専心・全身全霊…………。
自身の持つ僅かな力、小さな手肢を石拾いに注ぐ。全の力を、だ。
影が揺れる。石がぶつかり合う音が響く。灯りの光が届く範囲を隈無く探し、目当ての物がもう無いと解ると、松明を掴んで次の場所を探す。
魔石の有りそうな場所を見付けると、松明を持ちながら重い石の入った袋を1つ、両手で引き摺る様にして新たな置き場に移す。
もう1つを引き摺ろうとしたその時。
ドガーン!!
「キャァ!」
爆発音と震動が洞窟中を駆け巡った。
震源は地下。縦穴から轟音と共に土煙が巻き上がって来る。
洞窟中が悲鳴を上げるかのように揺れ動き、あちこちで石が転がり、土埃が落ちて来る。
不意な揺れと轟音にはさしもの少女も一瞬止まり、袋を落とす。
「……お姉ちゃんだ。」
轟音の正体がトゥキックだと知らない筈の少女は、揺れが収まると、手に持った松明で辺りを見回し、そう言った。
揺れの原因を確信し、すぐさま落とした袋を取ると作業を再開する。
袋を引き摺る少女。
パチィン!
松明が爆ぜて火の粉を散らす。
「熱ッ」
不意に顔を襲った火の粉に驚き足を止める。
ガラガラガラガラ!
少女の目の前で天井から岩が落ちて来たのはその後だった。
「…………危なかった。」
間一髪。危機を逃れた。
「さぁて、私を呼んだヤツはこの先かしら?」
スライムと別れて穿った穴から這い出し、横に繋がる洞窟を見つけて私は歩いていた。
洞窟の壁は綺麗に穴が開けられた様な感じがした。誰かがここを掘ったのかな?
そんな事を考えながらも、警戒を怠ってはいなかった。
汗ばむ陽気……じゃなくて妖気?近付けば近付く程熱気と共にビリビリする空気。
明らかにこの先に居るヤツはタダモノじゃない。
「さぁ、着いた………のかな?」
蛇行するような洞窟を抜けると、そこは開けた場所だった。
地面が他と違って異様に滑らかで、天井までたっぷり8mは有る。
何の為の場所かは知らないけど、自然の空間じゃない。そして、ここは気を引き締めなきゃいけない場所だ。それだけは解った。
だって、
私の目の前には、開けた場所の中央には一箇所だけ色の違う石で出来た椅子が有って、
その椅子にはメラメラ燃えた
火が弾け飛ぶと、下半身は狼の様な体毛に覆われた人間の足と人間の上半身、フクロウの頭とクチバシを持ち、牙をクチバシから覗かせ、首の周りに蛇を巻きつけた明らかな人外が居て、
「お前は、何も願っていない。何も望んでいない。」
そう一言言って私に殺意と炎の塊をぶつけて来たんだから!
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