決着

螺旋錐蹴スクリュー・トゥ

相手の上を取っている時に使う蹴り技の一つ。

回転しながら落下してトゥキック(爪先蹴り)を噛ます技。

回転と爪先の一点突破で貫通力を上げるから威力は高い………んだけど問題がある。

コレ、止められたら隙だらけなんだよね。

回転と重力を爪先に込めるけど、結局重力任せだから万一受け止められると真下から突き上げ喰らって詰む。

そして、私とこの技の相性は悪い。

何でって?私はそんな重く無いからよ!

大体の打撃技の威力は『重さ×速さ+α』。重くて速いと強い。

そして、重さは然程変えられない。限度がある。

親戚の蛇井へびいおじさん(300㎏)なんかがコレをやったら、多分絶対『半径20mを瓦礫の山に変える』じゃ済まない。蹴りで鉄筋ビルを吹っ飛ばせる程度の大爆発起こせる。マジで。

重力の関係上、速さに直接干渉するのも難しい。なにせ加速のエンジンの足を武器にしてるから。でも、回転を殺さず加速するのは難しい。

吐息で加速する?相手が見えなくなる。それは出来ない。

この技を諦めるという選択肢もあった。








絶ッ対!だった!








舐めるなよ!その程度で諦められるほど私は若くねぇ!

具体的にはティーンエイジャーな訳だから!マジでリアルな10代!コレで老成したら私、30代には朽ち果てTerror!!!!!

そも、そんな程度のハンデ、どうって事無い!

ブチ壊したらぁ!

考えろ。加速しようにも足は蹴りに使ってるから使えない………あ、なら、手を加速に使えば良いんじゃない?


ゴキリ180°発想を転換した!


足で加速して手で攻撃するのが常なら、今回みたいなタイプは手で加速して足で攻撃すれば良い!

手を使っての加速。足場ならぬ手場を掴んで引っ張る?回転の関係上それはダメ。

回転を殺さずに加速するには何も触れずに、重力に加算する形で手を使って加速しなければならない。

手を使っての加速。

そう言えば、リキおじさんが使ってたな。

腕全体で起こした風圧で空を飛ぶってヤツ。で、応用で裏拳の拳圧で火炎放射器の火を弾き返す(?)技。

アレを使ってみよう!


リキおじさん 本名:逆雷力さからいりき

まぁ、物理の力に逆らう事がライフワークなおじさん。『水圧に逆らう。』と言ってマリアナ海溝に素潜りして『マジで水が冷たくて暗いんだ。あそこ。』という迷言を残したり、『重力に逆らう』と言ってマジで空を飛んだりしたりと面白い力の使い方をするおじさん。

これを、指先を使ってやる。

人指し指から小指を握り込み、その爪を押える様に親指を乗せて、任意のタイミングで最大8本の指を弾く!

回転を殺さず、ウェイト関係無しに空気圧で加速する。


螺旋錐蹴スクリュー・トゥ 超加速エアバースト


それが蹴りで起こる爆発の正体だった。




「私の………勝ち。」

私が居るのは小さなクレーターの底。

有るのは削れて砂になった岩と小さなゲルの塊だけ。

『ブヨ……………』

ゲルの塊の中に色の違う塊が包まれる様にあった。

震える様にそこに居たが、最早抵抗する力は無い。

私の勝利宣言は真実だった。

蹴りの衝撃で足が痺れてるけど、折れてないし、手も無事だ。

「じゃぁ……」

全力でやり合い、立っていたのは私。

「終わらせようか?」

スライムを見てそう言った。

『プルウ。』

相手もそれを解っているのか、逃げようともしない。

「じゃぁ……………」

拳を固く握って振り上げる。

『プ………』











スライムが手に当たる感触がする。

少し冷たくて、柔らかくて、面白い感触。

「またね。」

拳に来る感触を少し楽しんでスライムに背を向ける。

『プヨ?』

首を傾げ……てはいないけど、そんな感じがする。

当然だろう。さっき迄殺し合いと言って差し支えない…そう言わないと差し支えるレベルの事をやっておきながら瀕死の相手に拳を合わせてバイバイなんて、何の冗談かって思う人が大半だろう。

でも、理由はある。

「また今度、勝負しましょ。」

そういう事。


下からの不意打ち。

弾幕での攻撃。

全力をぶつけた後、更にその先の全力を振るった。


相手をしていた時、心躍った。

それで十分じゃない?

「またね、バイバイ。」



私はその場から去っていった。

スライムだけがクレーターに残った。

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