親方!空から女の子が!
テミスは、不安は抱いていなかった。
自分の知るお姉ちゃんはほんの少しだが、付き合いは数日と浅いが、それでも、全貌測りかねないほんの一端の力であっても、揺るぎ無い信頼はあった。
『お姉ちゃんは戻って来てくれる。』・『無事帰って来てくれる。』という確信があった。
しかし。
「お姉ちゃんは誰に会いに行ったんだろう?」
私を捕まえてお姉ちゃんを喚んだ人達が私に向けた怖さを感じない。
私を捕まえて袋に入れた人達の時に感じた怖さも感じない。
でも、お姉ちゃんは、怖い人に会った時の顔をしてた。
一体誰に会いに行ったんだろう?
「………………。」
松明に照らされた足下の石を拾う。
これはお爺ちゃん達の欲しい石じゃない。
足下の石をまた拾う。
これもお爺ちゃん達の欲しい石じゃない。
少女は無力な自分を知っていた。
また、『自分に出来る事をただひたすらにやる事しか、それに抗う術が無い』という事を知っていた。
それしか知らなかった。
松明に照らされた少女はひたすらに石を拾う。
その顔には不思議と憂いや曇りは無かった。
むしろ、不思議と暖かい気持ちだった。
パチパチパチパチパチパチパチ…………カラカラカラカラカラ……カチッ
松明がパチパチと燃え盛り、石を拾い、捨て、目当ての魔石を袋に入れる音が洞窟に響く。
少女の事を知っているのは、松明の光と洞窟の石達だけだった。
地面の感覚が無い。
代わりに地面の有るべき場所から乾いた熱風が吹き上げてくる。
要は、私の立っていた洞窟の下は岩石の床を挟んで空洞が在って、その床を何かにブチ抜かれて私は自由落下中って事。
そして、その犯人も私と一緒に絶賛自由落下中だった。
熱風に下から吹き上げられるのは私と、砕けた岩と、そしてスライム。
私を叩き落とした犯人はスライムだった。
ポニュン
スライムを引っ付かんで握り潰そうとして気が付いた。
掴んで見た感じ、コイツには核がない。
スライムには確実に1つは有る核がない。つまりコイツはスライムの体の一部。本体じゃない。
リエさんのスパルタ講座曰く、『スライムは核の無い状態では単純な動きしか出来ない。』らしい。
リバーススライムは体が爆散しても、核があれば、その他部分は体を戻そうと核に集結するらしい。
でも、リバースには岩を砕くような破壊力は無い。
なら、こいつの正体は、床を砕いた犯人は…………………………………
ヒュン
「そこじゃい!!」
思考を中断して体を前転し、足下に踵落としを喰らわす。
パチーン!!
踵が柔らかいナニカを捉えて爆散する。手の中に有る物と同じ感触。
ヒュンヒュンヒュン
暗闇の中、足元の熱風を切ってこちらに何かが複数飛んでくる。
「なんのぉ!」
パチンパチンバシーン!
空中で身を翻して飛来する何かを弾き飛ばす。
地面はまだ遠そう。でも、もう直ぐ、もう直ぐだ。来た!
ヒュンヒュンヒュンヒュッ
今度は闇の中から来た飛来物がちゃんと見えた。
明順応・暗順応。人間の光への適応反応である。
暗い所から明るい所へ、明るい所から暗いところへ行った時に目がその場に馴れる現象。
そして今、暗順応がやっと終わって周囲の景色が見えて来た。
さぁ、ここからだ。
「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
全力で打撃を叩き込み、飛来するスライムを爆散させる。
弾幕を弾き飛ばした先、やっと見えるようになった地面には大きなスライム。
体の一部を切り離して弾丸にし、飛び道具の様にして攻撃するスライム。
ワイズスライムだ!
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