首飾りの行方

 「で、職人’sの結論としては、『効果は無いけど良品に間違いは無い。効果の付与の加工をするなら……」

 「「「「「「ウチに任せろ!!!!!!!!!!!」」」」」」

 その場に居た職人全員が声を揃えてそう言った。

 「何言ってんだ俺がやる!!」「抜かせ!ウチが一番だ!!」「嬢ちゃん、騙されんな、ウチが、真の職人だ!!」「笑わせんな、ハンマーでその鈍頭なまくらあたま叩き直してこい!」「嬢さん、ウチに来な。一万分の一の精度で最ッ高の仕上がりにしてやる。」「ほざけ、その程度なら俺でも出来らぁ!」「それだけのモノが有れば伝説級の装備にしてやるぜぇ。」「黙れ、鍛冶紛いが詐欺紛い言いやがって!」「んだと!?」



 やや暴徒化気味。本気の取っ組み合いになりかけてる。テミスちゃんに至っては返して貰った首飾りを大事そうに掛け、ドン引きして私の足をヒシと掴んで離れようとしない。

「えっと………この状況を作った犯人は私だけど……どうしようコレ。殴る?一発ずつ噛ます?噛ましちゃう?もしかしなくてもオラオラしちゃう?流石にここ最近の話、バトルが少なくなっちゃってるし、更新頻度も落ちちゃってるし、丁度良いかな?梃入れって事で。」

 「お姉ちゃん、それだけは止めてあげて、死んじゃう。絶対死んじゃうから。

 あと、メタ発言も止めて。」

 テミスちゃんに静止されるけど、流石に収拾つかなくない?

 締め落とすか打撃で黙らせるかを私が悩んでいる間に、調停者が颯爽と現れた。

 いや、ヒーローの様に『颯爽と』、と言うよりはぬらりひょんみたく『何時の間にか』が近いな。

 「で~?お前達、加工の腕は良いが、材料の都合は付いてるのか~?納期は…………何時を予定してるんだ~?」

 伝説の職人、デリードさんが暴徒化寸前の職人の海を割いて悠々とこっちに歩いてくる。

 なんか、その場の皆が『ヤッベ』みたいな顔であちこちに視線を泳がせ始めた。

 「嬢ちゃん達ぃ~、如何したんだ今日は~?」

 覇気の無い様な、掴み所の無いお爺さん。普通に街で見かけても、伝説の職人と言うよりは孫に温かい目を向けるお爺ちゃんとしか見られまい。

 「これ。」

 テミスちゃんが首飾りを持ってデリードさんの所に駆けて行く。

 「お~これかぁ。

 そう言えば、如何だい~?その服、気に入ってるか~?」

 屈んでテミスちゃんから首飾りを受け取りながら、テミスちゃんの目線に合わせて訊いてくるデリードさん。

 テミスちゃんはクルクル回ってお気に入りのポンチョを見せる。その顔は満面の笑み。何も言わずとも解るというものだ。

 「お~良かった良かった~。

 その服も儂も、甲斐が有ったわい~。」

 目を細めて笑う。どう見ても孫にポンチョを買って、気に入って貰って互いにニコニコしている孫娘&じいじの図!違和感があの空間に不可侵だ!

 「デリードさん、どういう事ですか?」


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