謎めく首飾り



 「あの首飾りがもし、『どっかの腕利き職人のトコから未完成品をくすねた』ってんなら納得するが、詐欺紛いの露店商がコレを売りつけたってなると…………引っ掛かんだ…おかしい。」

 「????????????????????????????????????」

 余計解らなくなった。

 「あー………つまりだ。

 お前さんが持って来た首飾りは確かに何の効果も無い、文字通りお飾りの飾りだ。

 詐欺紛いの商人なら効果を付与するなんざする訳無い。当然だ。

 だから石の方も屑石を嵌め込んで、装飾もテキトーにする。辛うじて装飾部分を高く見える様に実用性の無い綺麗なだけの飾りを見せかけで施す事が有るくらいだ。

 だがな、ありゃぁ違う。確かにただの飾りだが、金属加工の腕を見る限り、かなり良い、ここに工房を持っていてもおかしくねぇ、恥ずかしくねぇ出来だ。」

 成程、安い物を高く売ってボロ儲けするのにそんな装飾加工は必要無い。なのに、あの首飾りは安物を掴ませる為の物としてはミスマッチな訳だ。

 「それだけじゃねぇ。石の方も石の方だ。

 付与に使う石には、まぁ容量みてぇなモンが有る。

 俺達は言ってみりゃ、俺達は石の中の空白部分に色々な効果をブチ込んで効果を付与してんだ。

 要領が大きけりゃそれだけ強い効果、沢山の効果がブチ込める。

 値段の低い屑石は容量が小さく、値段の高い上物は容量がデカい。

 ここまでは解るな?」

 要は、石はUSB的な物だと思えば良いのか。

 8GBよりも16GBの方が色々有用なデータを色々詰め込める。そして、容量が大きい程値段も張る。

 「解ったけど……それが何の関係が有るの?」

 「あの首飾りの石。容量が無茶苦茶デカいんだ。

 それこそ、第一線冒険者の使うトンデモ効果を入れられる装備品か、はたまた、召喚術師が召喚した魔物か何かを放り込むのに使うのに使うんじゃねぇかって位の………な。」

 「それが20万エルって言うのは?」

 「ニセモンを疑うか実は呪いのアイテムで暗殺用を疑うか盗品を疑う。

 だから持ち出したんじゃねぇかって思ったんだ。」

 やっと合点がいった。

 露店商は価値が無いモノを渡した訳じゃ無い。でも……

 「でも。効果は全く無い。」

 「あぁ、だから首を余計傾げてんだ。

 あれだけ容量が有って、金属加工の腕があれだけ有って、そんでもって付与しない挙句に20万なんてアホみたいな値段で売りつける。

 一体何の冗談だ?あれだけの物と腕が有れば幾らでも遣り様が有んのに???」

 ……………………何で?

 「あぁぁぁぁぁ!全く解らんぞ!」「惜しいなコイツ!」「盗まれたモンを掴まされたんじゃねェか?」「したら大事になって誰かの耳に入ってる筈だ。そもそも、これだけの石が入手はいってんなら気付くだろ?そんな情報入ってるか?」「これだけのモンだろ?手に入るにしろ盗まれるにしろ誰も気付かねぇなんて事無いだろ?」

 首飾りを調べていた職人’sの方が騒がしくなって来た。

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