道具街アゲイン
「おぉお!昨日の嬢ちゃんじゃねぇか!どうした?」
向かった先は道具街。
昨日の今日で戦々恐々されるかと思いきやの歓迎ムードだった。
「お、昨日の。」「何だ?あの娘か!」「ウチのとっておきを見事ブチ壊したんだぜ。スゲェだろ!?」「どうした?買い物か?鎧から装飾から武器から、ウチなら良いモン安くするぜ。」「何言ってやがる!?嬢ちゃん、ウチ来なウチ!!ドラゴンスライスにする剣とドラコンにスライス出来ない盾が売ってるぜ。」
人が人を呼んで職人がワラワラとやってくる。
あっという間に私達は職人達に囲まれる事になった。
丁度良いや。元々色々な人から訊く気だったし。
「テミスちゃん、ちょっとソレ、良い?」
「?……………良いよ。如何するの?」
私が指差したのはテミスちゃんの首元に輝く首飾り。そう、あの、『なんだかんだで買っちゃった首飾り』だ。
テミスちゃんが首から外して少し躊躇いながら渡してくれた。
「はい。どうするの?」
「有難う。大丈夫。壊したりしないから。さて……………………」
首飾りを手にした腕を高く掲げ、目の前でわちゃわちゃする職人‘sに向けて叫ぶ。
「ねぇ!この首飾り。誰か、鑑定出来る人って居る?
効果とか、誰が作ったかとか。着けても問題無いかとか。そういうのを知りたいんだけど?」
職人’sの目が輝いた。
「何だ何だ?」「何かの未鑑定アイテムか?」「オイ見せて見ろ!」「任せろ!装飾は一番得意な奴だ!」「俺にも見せてくれ!」
わらわらがやがや、一層騒ぎが大きくなった。
ここに来た目的。それはテミスちゃんの首飾りの鑑定……露骨に言えば調査…かな?
この手の世界観だと、身に付けると厄災で破滅する呪いのアイテムがあるらしい。ゲームでそういうシステムが有るって聞いたことが有るし。
それに、現実でも『呪いのホープダイアモンドの伝説』位は聞いた事がある。
ただ、呪いのダイアモンドくらいなら、向こうは科学文明だから、「呪いなんて。」と笑うことは出来た。けど、流石に魔法とかスライムモンスターがしれっと居る世界じゃ笑うに笑えない。
呪いや、でなくても毒針の類の罠が有っても不思議じゃない。
もし、その仕掛けが職人の目で見て解るなら、今の内に見て貰っておいた方が良い………と思った。
何でそんなものを今の今まで着けていたかと言えば、そもそも最初に買った時点でテミスちゃんが着けていたけど問題は無かった。って事が先ず挙げられる。
そもそも、そんなモノ、着けた時点で何かしら体調不良が来ておかしくは無い。でも、それが無い所を見ると危機に直面している…………って訳じゃ無さそうだったから。そのままにしておいた。
そして、もう一つ。これが最も重要な理由だ。
今、テミスちゃんの目は、気が気で無いように見えた。
その視線の先は勿論私の手にする首飾り。
私に渡す時も少し躊躇してたあたり、やっぱり気に入ってるみたい。
まぁ、つまり。単に私が、テミスちゃんのお気に入りの首飾りを取り上げる事はしたくなかった。という事だ。
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