帰還→

 「テミスちゃん、ゴメン……お待たせ!」

 待たせていたテミスちゃんを迎えに行った所、テミスちゃんが涙目で突撃してきた。

 流石に緊急事態とは言っても、置いて行ったのはダメだったな……………。

 「心配した…………お姉ちゃんが居なくなると……………死んじゃうと思った…………!」

 前言撤回。駄目じゃなくって私、本当に馬鹿だった。

 突撃したテミスちゃんが私にしがみ付いて泣いていた。しかも、その手は小刻みに震えて、だ。

 私が何をしたのか教えられた。

 テミスちゃんは一人ぼっちで攫われて、あの城で私を呼び出す触媒にされて、今、この子には私以外に確実な繋がりが無い。

 リエさんや宿屋のセリアちゃん達、道具街の皆、繋がりは有るけど、彼女を家まで届けると約束したのは私だけ。

 頼りになる相手は、自分で言うのも何だけど、私だけ。

 そんな私がロクな説明無く、テミスちゃんを置いて、危険に飛び込んでいった。馬鹿だ!

 テミスちゃんを元の場所へ届ける責任と守る覚悟が全然足りて無かった。

 「テミスちゃん…本当にゴメン。」

 黙って抱きしめて来るテミスちゃんを私も抱きしめ返した。







 「スライムの核。持ってきました。」

 ギルドへ行くとそこにはリエさん……………は居なかった。

 「あれ?今日は来てると思ったんだけど………?」

 スライム退治の証拠の核を手に抱えて辺りを見回すけど、見知った顔のリエさんは居ない。

 本当は倒したあの猛毒スライムについて話をしておきたかったんだけどな………。

 教えて貰ったスライムは何匹も居たけど、この近くにあんなのが居るなんて聞いてない。

 忘れたなら忘れたで不味いし、新種なら新種で不味い。

 「すみません、スライム討伐を終えました。それで、少し気になる事が、」

 知らない顔の受付さんに話を訊こうとしてスライムの核の入った袋を出すと、

 「あっ、ちょっと!」

 「核の数………423個。一体800エルで合計338400エル。はい。」

 無言でひったくって袋の中身を持っていったと思うと書くの代金を受付においてその後ろの扉へ消えていった。

 何あれ?………………………………仕方ないか。

 他の人に訊こうにも事情が事情だし……………後でもう一回行こう。

 「テミスちゃん、まだ時間有るし、ちょっと良い?」

 「?」


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