受付嬢リエ

 扉、小さな窓、机、椅子が三つだけの簡素な部屋に、私達三人は居た。

 「では、先程話せなかった話。クエストの受け方を御説明致します。」

 受付のお姉さん改めリエさんからレクチャーを受ける。

 横ではテミスちゃんがちょこんと椅子に大人しく座っている。

 「先ず、クエストと冒険者には幾つかのレベルが有ります。基本的にレベルは10段階あって、自分のレベルまでのクエストしか受けられないシステムになっています。

 ルーキーの方は自動的にレベル1の冒険者なのでレベル1のクエストしか受けられませんが悪しからず。」

 前にやらせて貰ったハンティングゲームみたいね。

 「基本的にクエストはレベルごとにボードが分かれています。

 上の方に星が書かれていますからその数で判断して下さい。」

 文字が未だ読めない私にとっては好都合。

 「リエさん。」

 「はい?なんでしょう?」

 「レベルを上げるにはどうしたら良いですか?」

 「良い質問です。

 レベルは基本的にクエストをこなし、その実績や周囲からの評判や実力を加味し、認められればレベルアップテストというものを受けて貰い、晴れてレベルを上げる事が出来ます。」

 要はクエストを受けて受けて皆の為になれば良いって事ね。

 得意分野ジャネーカ!

 「………やる気十分なようですね。でも、今日はもう遅いですし、明日から冒険者を始めては如何です?今日はテミスちゃんも色々有って疲れたでしょう?」

 そう言ってリエさんはテミスちゃんの方を見てにっこり笑う。

 大人に向ける笑顔とは違った。少し隙の有る、慈愛に満ちた笑顔。

 「………そう言えば、八坂さん達は、宿屋はもう決めているのですか?」

 「いえ、今日ここに来たばかりで全然……。」

 私だけなら野宿でも良いけど、流石にテミスちゃんは不味いか……そう言えばどうしよう?

 「いい宿を紹介しますよ。

 知り合いがやってて、宿賃は後払いでいいですから。今日はそこへ行って、テミスちゃんとお風呂に入ってゆっくりしてあげて下さい。」

 顔に出ちゃったのか、バレてる。

 でも………他に道は無いし、私じゃ宿は見つけられないし。

 「有り難う御座います。リエさん。この御礼は必ず後で。」

 「いいえ、気にしないで下さい。

 ギランさんを天井に打ち上げた時はどんな方かと思っていましたが、妹思いのお姉ちゃんを放っておくのは私としても…ですから。ね。」

 そう言って軽くウインクをした。

 「地図を渡しておきますから、『リエの紹介で来た。』と言えば通してくれます。

 ギルドは明日の朝からやっているので、良ければ私に声を掛けて下さい。

 初心者用依頼、見つけておきますね。

 あと、テミスちゃんにはこれを。」

 そう言って懐から包装紙に包まれた飴を取り出した。

 「疲れたでしょ?今日はそれを舐めて、お風呂に入ってごはんを食べて、お姉ちゃんとゆっくり寝なさい。

 これは悪夢を見ない魔法の飴だから。」

 そう言ってテミスちゃんの手に飴を握らせた。

 「さぁ、地図を。赤インクがこのギルドで青インクが宿です。お姉さん、テミスちゃんの傍に居てあげて下さいね。

 では、私はこれで。」

 そう言ってリエさんは部屋から出て行った。

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