帰還

 どうやってテミスちゃんを探したか?

 人探しの時にやる事なんて決まってる。

 SNS?この状況下でそんなものは使える訳が無い。

 最も原始的な人探しの方法。それは走って同じような年恰好の人間の顔を見て、本人を見つけ出す事だ!

 少なくともこの世界には車は無さそうだし、場所はこの都市の中。ローラー方式で走り回れば見つかると思って走り回っていた。

 ただ、アテも無く、土地勘も無かったから端から端まで走り回り、うっかり西側から走った所為で東側が後になった。

 ズタ袋に入れられていたけど、テミスちゃんの声が聞こえた。

 『ありがとう』って!

 でも、そこに諦観。諦めがあった。

 テミスちゃんは未だ若い。諦めるには早過ぎる。(様に見える。美魔女じゃ無ければ。)

 それに諦めの感謝の言葉を言わせるなんて…………。

 「アタシノバッカ!!!!!!!」

 地面を思わず踏み割っちゃった。

 あちこちで足音が遠ざかる音が聞こえる。ヘンなのが付いてたみたい。

 「お姉ちゃん?」

 心配そうにテミスちゃんが話しかけて来る。

 「うぅん。何でもない。

 テミスちゃん。歩きながらで構わないけど、聞いて。」

 「うん。」

 「二度と、『助けを求めない。』なんて馬鹿な真似は止めて。」

 「うん。」

 「自分が居なくなれば、私が自由に旅するとでも思ってたの?」

 「ん。」

 「残念ながら、私はそうしたら世界の果てを引っ繰り返してでもアナタを探してたところよ。」

 「ン…。」

 「自己犠牲なんて…馬鹿な真似二度としないで。」

 「………………………………ン。」

 「私は、テミスちゃん。あなたが望む限り、私はあなたを故郷に送り届ける。」

 それはあなたの為だけじゃない、私の為でもあるの。」

 「ん。」

 「心配させないで。」

 「ん。」

 「そして、最後に。」

 そう言って、背骨が折れない様に抱擁した。

 「無事で良かったぁァぁぁァぁぁァ!!!!自己犠牲なんて止めてぇぇぇぇぇ!」

 裏路地みたいな町をぐるぐる回りながら抱擁して歩き回る姿は異様だっただろう。

 でも、良かった!






 「と、言う訳で。

 誘拐されそうになっていましたが、ちょっと誘拐犯〆て奪還してきました。皆さん、

 お騒がせ致しました。」

 「ました。」

 今、私達はギルドの受付のお姉さんとさっき酒を飲んでいた人に謝っていた。

 「いえ。こちらこそ!誘拐が起きていたのに気付かずに申し訳有りませんでした。」

 「済まねぇな。全然気付かなんだ。

 でも……〆たって………。」

 酒飲みの人は何だか顔が引きつっていた。

 「あっ!そうでした。八坂さん。申し訳有りません。あなたにすっかり伝え忘れていたことが有ったのです。

 もし良ければ今、それを伝えてよろしいですか?

 無論、ギルドの奥の方の部屋でお教えいたしますし、お子さんも連れて来て良いので……ヒッ!」

 受付嬢のリエは戦慄して体の震えが声にまで表れた。

 今、八華の全身から陽炎のようなモノが現れ、周囲の景色が歪み、何より、その様子からは明らかに今から魔王を倒そうとする狂戦士の如き激しい闘争心が見えた。

 「アタシマダミコンナンデスケドォォォォオオオオオオオオ!!!!!」

 「ごごごごごごごご!ごめんなさいっ!

 では、妹さんと一緒に来て下さい!」

 そう言ってギルドの奥へと三人は消えていった。



 「…………………なんか、嵐が来ねぇか?」

 一人残されたドーラはそんな予感を感じていた。

 それが大当たりだと、彼は知らなかった。

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