タンポポみてーに!

 「アナタタチガユーカイハン?」

 目の前には村娘が居た。

 さっき迄いなかったし、近付いてくる気配も無かった。

 一体何処から来た⁉いや、それ以前に何でその事を知ってる⁉

 「テミスちゃん!ゴメン!遅くなった。

 今。タスケニキタ!」

 村娘から明らかに縊り殺す気満々な殺意が漲っている。

 「何だお前はぁ⁉」

 が、この場所でチキンな真似をしたら死ぬ。

 「何だ?………か?

 それは、お前達がズタ袋に詰めた女の子を解放した後で、じっくり……………教えてやるよ。

ソノニクタイニナァ。」

 バキゴキメキャバキガキッ!

 指を鳴らす。

 このガキ……絶対にただのガキじゃない!

 いきなり出て来た事も異常だが、様子が明らかに村娘じゃない!

 「動くな!手足、いや、指一本でも動かしてみろ!このガキの顔はぐちゃぐちゃだ!」

 ズタ袋から赤毛のガキの顔を出し、剣をその顔に突きつけて脅す。

 たとえコイツがどんなに強い魔法使いだろうが剣士だろうが、動けなければ何とでも出来る!

 「エッホ……兄貴ぃ~。止めてくれよぉ~」

 「ヘイホ……このガキを無事に届けなきゃ俺たちゃ干乾しになっちまうよぉ~」

 この馬鹿野郎共が!脅しに決まってるだろ!こんな怪物相手に正面から相手にしてみろ!確実にバラバラだ!

 「良いわよ。手足どころか指を動かさないで……………」

 ヒュッ!

 空気が鳴る。

 アレ?なんか体が軽く………………………


 ドガン!


 視界が真っ黒になった。

 視界が………………意識が………真っ黒に……

 『『兄貴ィィィィィィィィィィィィィイイイイイイイ!!!!!』』

 デポとマイーニの絶叫が聞こえていたが、直に小さくなって、聞こえなくなった…………………。

 「兄貴ぃ!」

 「しっかりしてくれぇ!兄貴ぃ!」

 テミスちゃんに剣を突き付けていた男が、後ろの方の壁に突っ込み、上半身が建物の壁に刺さった。

 「兄貴が…」「兄貴がっ!」

 「「アスファルトをブチ破って健気に咲いたタンポポみたいにぃぃぃぃぃぃいいい!!!!!!!」」

 アスファルトなんて言葉、異世界で使って良いの?ま、いっか。

 「ホラ、ユビヒトツウゴカシテナイゾ。」

 手足は使っていない。魔法的なsomethingは習っていないし、異世界の仲間なんていないし、私にはチートも無い。

 そんな面倒な事はしていない。これは簡単な話。だ。

 肺活量限界まで静かに空気を吸い込み、肺を圧縮して、中の空気を圧縮して、口から空気を吹いただけ。

 『吐息は指向性を持って誘拐犯のリーダー的なのを捕らえて吹き飛ばした。』簡単でしょ?

 誕生日のケーキの蝋燭消しと同じ。そう、蝋燭の火を吹き消す様に命の灯火を消して……………いや、殺して無いよ?

 さっきの他界他界したおじさんも死んではいないよ?

 城を落した時も言っておくけど!一人もってないからね!



 「テミスちゃん。本当に…ゴメン。

 もう安心して。」

 私は震えあがっている男達二人からテミスちゃんを取り上げて奪還を終えた。

 震え上がる二人を無視して、私とテミスちゃんは裏通りから去っていった。

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