『manga’s love comedy heroine』のリーサルウェポン
「調子に、乗らないで頂戴!」
後ろから声が飛んでくる。
ヒュン!
細剣の切先が二つ。弧を描いて首を切り裂かんとする。
ひらりとステップで躱すが、もう一度細剣が襲い掛かって来る。
剣舞と言うのだろうか?舞う様に、細剣を手にした踊り子の女は絶え間なく細剣を振って斬りかかって来る。
流石に剣をモロ喰らったら不味いな………
『
細剣の連撃を避けて足に一撃を叩き込む。
剣を掻い潜り、脛目掛けてラリアットを!
グニャン
⁉
ラリアットが捉えたのは骨、では無くやわらかなコンニャクの様な質感。
いや、肌の質感は有るから、コンニャクを生肉で包んだような感触?
そんな事を考えている内に上から細剣の連撃が降って来る。
体を横に捻って身を躱すと体勢を立て直す。
自分が叩き折った筈の足を見ると、そこにはガッツリ凹んだ腕の跡。
でも、相手は痛がる素振りも見せない。
「………アンタ、何?」
確実に芯を捕らえた筈なのに手応え、否、足応えの無い蹴りの感覚。
足が抉れた様に凹んでいるにも関わらずこちらにその足のまま突っ込んでくる。
明らかに痛いと思っていないし、折れてもいない。
流石に痛みはどうこう出来ても、物理的に骨抜き状態で歩くのは無理でしょ?
「フフ、不勉強なお嬢さん。
この世界には色々な生き物が居て、魔法が有って、スキルというものも有るのよ。」
細剣を振るいながら器用に答える。
隙を見て鳩尾に拳を捻じ込むが、これもまたコンニャクを殴った様な感覚。
鳩尾に隕石でも落ちた様なクレーターが出来ているが、それでもお構いなしに細剣を絶え間無く振るって来る。
因みに、割と思いっ切り殴っているから、真っ当に拳を喰らっていれば、内臓の幾つかが体の中で爆散してもおかしくはない威力は有る。
「スキル?」
「そうよ、先天的な才能。
不勉強な貴女に特別サービスをしてあげると、私のこの技能は『超軟体』っていうの。肉体の弾性を操作して、打撃を受け流す対脳筋スキルよ。
骨も肉も内臓も、全てを液体のレベル迄に柔らかくして、衝撃で砕ける事は無い。
たとえ貴女が鉄を打ち砕けたとしても、私の体に傷を付けるなんて無理。」
そう言った途端、凹んだ足と鳩尾が風船のように膨らんで元に戻った。
「貴女の攻撃は全然訊かないわ。」
実際、二発喰らわせても堪えている様には見えないから嘘ではない。
ガシ!
距離を一瞬で詰めて手首を掴み上げる。
だけど、そんな事は関係無い。
こっちにだって打撃無効だか何だかに対しては有効な手段が幾つも有る。
私の所の世界とて打撃無効の武術が無い訳じゃない。
で、そういうのに対する方法だって当然ある。
例えば、あの『シェイク』だってそうだ。
コンニャクだろうがスムージーだろうが慣性の法則の前に目を回しなさい!
思い切り掴んだ手首を振るおうとして、
スルン
手首が逃げていった。
ヒュッ
反射で躱したものの、細剣の風圧が頬を掠めた。
「液体レベルって言ったでしょう?
水を手で掴める?どんなに力があったって、水は拳で掴んだ程度じゃ全然捕まえられないの!」
細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣細剣
細剣ラッシュが止まらない。
掴めないと流石にシェイクは出来ないな……
詰んだ。
訳が無いでしょう?
舐めないで。そっちがスキルなるものを使うならこちらはアレを使う。
そう、『manga’s love comedy heroine』のリーサルウェポンを使わせてもらう。
「こっちの世界を舐めないで。」
細剣迫る中、私は突進していった。
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