八華海王

何か嫌な音がしたーー!!

同じ場所に何回も蹴り入れるって!

しかも生身で!!

何で金属を蹴って折れない?何で鎧の破片で肌を切らない血が出ない?

耐久と攻撃がどうかしてる!!

不味い、耐久勝ちしようとしてたけど、殺られるのは時間の………


問題にもならなかった。

次の瞬間、JKが視界から消え、体が浮き上がった。

「一体何をする?放せ、放せーー!!」

鎧兜の巨漢が華奢なJKに持ち上げられていた。

ジタバタするも、ガシリと掴まれた巨漢が、赤子の様に、持ち上げられていた!

しかし、同時に男は安堵していた。

男は、目の前のJKは『この鎧が『地面に衝撃を流すもの』だと勘違いしている』と思ったからだ。

しかし、この鎧は『衝撃をランダムな場所に転移させるもの』だ。

幾ら空中で殴り付けたところで結果的に中の自分には何も問題は無い。

そう、考えた。


「せーの。」

掛け声と共に揺れ動く。

体がぐらりと動き、頭から地面に叩きつけられ…………無かった。

地面にぶつかる寸前に止まったかと思えば、今度は地面が遠退き、かと思えば体が右に回転、左斜め上に高速回転、空に縦回転しながら横に回転させられながら投げられ……………………

天地が引っくり返る………だけではなかった。

ガシャン バキャン ゴキャ ガチャガチャガチャガチャ!!

鎧から凄まじい音が聞こえてきた。


「ふぅ。」

鎧の男がカクテルの様に振られて約数分後。


ガチャン!


「あ………ぇぁぅ………ォエ…………・‥・・‥…」

投げ出された鎧はうわ言を言うのみ。

兜からは鼻血と思しき血が少し流れていた。 「痛い、気持ち悪い、地面が無い…何?……こぇ?」

「『シェイク』!

相手を持ち上げ、高速で体全体をシェイクする。

この技を喰らった相手は、慣性の法則により、脳が頭蓋骨の内側に叩きつけられ、臓器・体液・平衡感覚はもれなくシェイクされる。

 たとえば、鎧を着込んでいた場合、鎧内部が無重力でも無い限りは身体中を鎧で打ち据えられる。」

そう、物理無効とは言え、決してすべての力を無効化し、遮断している訳ではない。

摩擦や重力の類いは鎧の中にも確実に有る。そうじゃ無いと中身が生きていられないからだ。

もし中に重力や摩擦が有るならば、鎧ごと中身をシェイクすれば良い。

何の変哲もない物理の話。

JKなら誰でもテストで苦労する話。

異世界人は魔法を神聖視し、科学文明を学ぶ私たちを下に見た。

それが敗因だ。

「貴様はJKを舐めた!」

鎧を捨て置き、八華はそう言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る