忘れても、忘れても、忘れられない日


忘れることはない。

毎年、この日が近づくと必ず思い出す。



忘れることはない。

忘れても、忘れても、思い出す。

忘れても、忘れても、思い出さざるを得ない。



毎年、毎年、これからもずっとそうだろう。

何をしていたのか、あの日。

どこで何をしていたのか、あの日。



一人一人が思い出す。

何をしてきたのか、あの日から。

どこで何をしてきたのか、あの日から。



一人一人が振り返る。

この日が近づいてくるたびに

忘れていたことを思い出したり

忘れてはならないと、誓いを新たにする。

それは調子のいい話でもある。



だけど

私たちはすべてを覚えておくことはできないから

調子のいい話でも

世界は一つであるかのように

世界は一体であるかのように

毎年、この日を迎えていく。



どんなに忘れないようにしても少しずつ忘れていくから。

どんなに覚えていても

都合の悪いことは忘れ、都合のいいことばかり覚えていくから。



あの日を

過度な悲観に染めきった記憶にしないためにも。

あの日を

過度な楽観に染めきった教訓にしないためにも。



忘れてはならないことを徐々に忘れていく私たちは

忘れても構わないことをずっと覚えていてしまう私たちは

この日が来るたびに思い出す。この日が来るたびに語り合う。



調子のいい話ではあるが

そうやって私たちは

忘れてはならないことと

覚えておかなくてもいいことを振り分けていく。



生きていくために。

生かしていくために。

活かし続けていくために。

忘れても、忘れても、忘れても、忘れないために。



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【 初出 】


詩のブログ

橙に包まれた青


2013年03月11日

「 忘れても、忘れても、忘れられない日 」 

http://komasen333.blog.jp/archives/2725433.html

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