第49話 動き出すネウロ
「場所はですね、シークレットにしています。なぜならその方が面白いからです」
「つまり、このブレスレットで私と握手した人間の生気を吸い取る魂胆かしら?」
「察しが良いですねぇ、さっきも言いましたがあなたに拒否権はありませんからね」
黙ってブレスレットを身につけるアリサ。母を救いたい一心、背に腹は変えられない。アリサの母親は病弱で、そこにネウロがつけこみ母親に呪いをかけたのだ。
「決行は午後三時。人間達が集まりやすい時間にしました。場所はあなたはアイドルだし、とあるCDショップにしましたよ」
「約束して! これで最後にすると」
「えぇ……良いですよ、これを最後にあなたの母親を救うと約束しましょう」
無情にも時が進むばかり、だが、これで母親を助ける事ができる。
***
「神里君聞こえる? 電波が遠いんだけど」
「も……し……も……し……聞こえるけど……回りの雑音がうるさくて」
電話越しで、ガブリエルの行方を追う伊織と護。いつの間にやら、繁華街に来ていた。回りの雑音と人混みに電話の声が聞きずらい。
「あのバカ、本当にどこ行きやがった!」
あちこち歩き回り、喉が渇いた護。自販機で飲み物を買い喉を潤すが、当然炭酸飲料を買い、ググッとビールを飲む様に一気に飲み干す。
「糖分補給完了!」
再び、伊織と連携してガブリエルを探し出す。
時は刻々と過ぎ、アリサのシークレットサイン会と握手会が始まろうとしていた。
***
神魔町のデパート内のCDショップ。この場所で人間達の生気を吸い取る策に出たネウロ。
「アリサさん、時間ですよ」
「えぇ……」
悪魔に魂を売ってしまったような表情も伺えるアリサ。
そんな事は露知らずに、店内アナウンスが流れ、客達の注目がアリサに集中し出す。
「えっ? マジ? アリサちゃんが来ているのか!」
ショップにいる客のボルテージが最高潮に達し、ネウロが客を整列させる。
「はいはいっ慌てないで一例に並んで下さいね」
何も知らずに、人間達が次々とアリサと握手を交わし、アリサのサインを受けとる。
「やったぁーアリサちゃんのサイン。しかも握手まで」
満足気に帰る客。すんなり終わったかと思われたが……。
「あ、あれ? 何か体がふわふわする……」
「体が動かない……意識が遠のく」
アリサに触れた人間達がブレスレットの効果により、体の自由を奪われ、ネウロが密かに仕掛けたカプセル型のゲージに人間達を閉じ込めた。
「フフフッ! ハーッハーッハーッ! 素晴らしい素晴らしいですよアリサさん」
「ネウロ……もう十分でしょ?」
「そうですね……もう十分です」
一つ息を吐き、指をパチンと鳴らしたネウロ。
「ぐっ……きゃぁぁぁー」
アリサの体に木の枝が絡み締め付け出す。
意識が遠退いていく……。
「あなたは十分役に立ちました。母親を救う、すなわちあなたと母親は仲良く朽ち果てる。これが私の救いですよ」
「だ、騙したのね……」
「人聞きの悪い事を言わないで欲しいですねぇ……あなたに永遠の命をプレゼントしようと言うのに」
「な、何ですって!」
意識が遠退いていく中、ネウロの話に耳を傾けるアリサ。怒りと悔しさが滲み出る。
体が次第に樹木と同化し始めた。
「最初から、お前の母親など助ける気などないよ。お前は人間の生気を吸い続ける悪魔の木となるんだよ」
勝ち気に誇り、高笑いを浮かべながら、周囲に結界を張り外部の接触を断つネウロ。店の外では禍々しいオーラが店を包み込む。
「こ、これは一体?」
「おや? ライブの時にいた天使じゃないか」
やっとネウロの居場所を掴んだガブリエルが現れたが、時既に遅く、アリサが一本の大木となっていた。
「テ、テメー! アリサちゃんに何をしやがった?」
「人間の生気を吸い取る悪魔の木。これにはピュアな心を持った魔族の血が必要なのだよ」
「それで、アリサちゃんが適合者か……」
「ご名答、褒美にあなたにも悪魔の木の贄となって貰う事になりました」
ネウロの手から放たれた暗黒の炎がガブリエルに向かっていく、何とか回避したが……。
「何しやがる! て、ヤローどこ行きやがった?」
ただならぬ緊張感、何故だかこの場に重苦しい重圧が押しかかる。
こんな事なら、ラファエルを連れて来るべきだったなと後悔が生まれた。
「ここですよ」
姿を現した途端に、ガブリエルの背後に蹴りを入れたネウロ。
たまらずに、ガブリエルが吹き飛ばされた。
「私の野望……そう、人間界、魔界二つの世界を統治する」
「ふざけやがって、ナメられたものだな」
空間を裂き、淡い光を放ちながら槍を取り出すガブリエル。
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