第48話 動き出す野望
ガブリエルを待つこと約二十分。うつむきながら歩いて来るガブリエルを見かけた。
「ガブリエルちゃん。お帰り」
「伊織……」
ライブで盛り上がり、ハイテンションなはずだが……。どこか覇気がない。
「おいっ、どうした?」
「ま、護! な、何でもねーよ。ライブ楽しかったぞ」
明らかに何か隠していると察知した護。敢えて深入りはしないでおくと誓う。なぜなら伊織も絶対感づいているからだ。
「力になれる事は出来るだけするから、悩まないでね」
「伊織、ありがとうな。大丈夫だぞ。アリサちゃん可愛かったなぁ」
元気を装い、帰宅する三人。密かに、伊織が護にメールをし、ガブリエルから目を放すなと指示が。黙って護は、顔文字で返事をするが……真面目にやれと、お怒りの返事が。
「お前、明日はどうするんだ?」
「明日で休み終わりだからな。人間界を満喫するから付き合え!」
「へいへい……」
こうなる事はわかっていた。敢えて素直にガブリエルに従う護………だって、伊織の雷が怖いから。
「あたしが何とかしてやる、だから、アリサちゃんはあたしが守る……」
勝負は人間界滞在期間。後一日で何ができる? 考えに考えたが、中々策が思い付かない。
朝を迎えて、朝食をもてなされ、いざ人間界観光へ……と言うのは、表向きでネウロの手掛かりを探すガブリエル。
「ヤローどこにいやがる? クソッ……」
「何か探し物か?」
護が探りを入れるかのごとく、ガブリエルに話し掛ける。
「ん? あっいやーちょっとなあのスイーツが気になったんだ。よし、行くぞあたしが奢ってやるよ」
注文したのは、まさかのデカ盛りパフェ。三十分以内に食べたら無料チャレンジ、失敗すると料金三千円。
「奢りって……これか?」
「あたしだって、持ち合わせあんまりないからな! 食えるだろ?」
言っている事が矛盾しているが、失敗のリスクを恐れスプーンを手にパフェにかぶり付く二人。
「相変わらずだな! 護」
「お前もな」
護より、五分パフェをたいらげたガブリエル。こいつの異常な食べっぷりはどこから……。
先に店を出て外で待つと言ったが、護が食べ終わった後にはガブリエルの姿はなかった。
「あいつ……やっぱり何か隠しているな」
伊織に連絡をして事の顛末を説明。伊織は怒るどころか、想定内だと言う。
「ガブリエルちゃんの居場所を家から追っているから大丈夫。私の指示に動いて」
「う、うん」
伊織は家で、お得の五円玉を紐にくくりつけ、神魔町の地図を真上にぶら下げガブリエルの居場所を追う。
***
「アリサちゃん、今日から新しいマネージャーが付くから」
仕事のスケジュールの確認のため、所属事務所に来ているアリサ。突然、社員がアリサに新しいマネージャーが付くと宣告。
「!!!」
目を疑った。新しいマネージャーは人間に扮したネウロ。アリサには直ぐにわかった。
「ちょっと二人きりで話をさませんか? 打ち合わせを兼ねて」
「はいっわかりました」
場所を移動し、人気のない事務所の通路に。
「今度は何をする気?」
「先日のライブは大盛況でしたねぇ……私更に思い付きました」
胸元から怪しげなブレスレットを出し、そっとアリサに手渡す。
「あなたのサイン会と握手会を本日決行します。拒否権などありません」
いきなりのサイン会と握手会、告知もしていないのにいきなりすぎる。
ブレスレットを黙って身につけるアリサ、今はただ、ネウロの言う事に従うしか他になった。
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