第7話 吸血鬼カーミラ3
「莉央ちゃん、帰ろう」
「うん」
まさか、護の妹が事件に巻き込まれるなんて、誰が予想したのだろうか。
「まぁ、何て初々しいのかしら。あの坊やを殺す前に、あの子の血を頂きましょうかしら」
物陰から莉央の姿を直視しているカーミラ、どうやって連れていこうか模索中、やはり動くなら夜。
そんな事は露知らずに、友達と下校する莉央、伊織と歩いている護を発見した。
「お兄ちゃん……て、あーっお兄ちゃんが女の子と下校してるー」
「り、莉央、大きな声を出すなー! お兄ちゃんが残念な人に見られるでしょ」
兄妹のやり取りに、笑って見守る伊織。
悲しくも確かに残念なボッチ少年に見られていたのは事実。
「うん、だってお兄ちゃんて、魔法……」
「だああーっ、莉央、今日は暑いなお兄ちゃんがかき氷を食べさせてやろう」
護の素性を話そうとする莉央、慌てふためき莉央の口を塞ぐ護、この前覚えた氷魔法で氷を作り、かき氷を莉央に提供。現状、この事実を知らないのは莉央の友達だけ。友達は護が手品師か何かだろうと思い込み、深くは追及していなかった。
莉央の友達と別れ、帰宅した護達。伊織も護の家に来ていた。一応勉強会と言う名目で、カーミラ対策の作戦を練る。当然家族からは、護が彼女を連れてきたなど、勘違いの扱いを受けてしまう。
「今のところ反応なし、何処かで身を潜めてるね」
最初にカーミラを探した方法を取ってみるが、五円玉は虚しく、真っ直ぐ宙に真下を指したまま。気になるのは、護が氷魔法を急に覚えた事、カーミラは光魔法が効くのか? 伊織は戦ってないから何とも言えない。
「とにかく、何かあったら連絡してね」
何も手がかりが掴めず、今夜は解散となり、夕飯後、莉央とゲームして遊ぶ護。
「お兄ちゃん、伊織さん優しそうな人だね」
「ん、あぁ、そうだね」
ゲームをしながら、伊織についての会話。正直好きなのか? とか、恋話をやたらとしてくる莉央。流石に眠くなり、莉央は先に寝ると言い、自分の部屋に戻った。
それから約二時間後、護も寝ようとした矢先、一本の電話が護のスマホにかかりだす。発信者は不明ではあるが、気味が悪いから何となく出てみた。
「はーい、坊や元気してるぅ?」
電話の声は忘れもしない声色の、カーミラだった。何故、護の番号を知っているのか? 一体何の用なのか? 謎が謎を呼ぶ。
「何か用? 眠いから明日にして」
「そんな事言って良いのかしら? 貴方の妹だったのね、あの子」
「お前、莉央に何した?」
「真実が知りたいなら、妹の部屋においで」
まさか、カーミラが莉央に目を付けていたとは、莉央が危ない。お兄ちゃん、お兄ちゃんとやたらになつく妹、時折ウザい時もあるが、たった一人の妹。家族まで巻き込むなんて冗談じゃない。伊織に連絡を入れるが、万が一会話を聞かれたらまずい、通話状態にしたまま、莉央の部屋に行く。
部屋に行くと、パジャマ姿で眠りについた莉央を抱き抱えたカーミラが窓際に立っていた。
「おいっ、何で俺の番号を知っている?」
「私は魔族よ、あなたの秘密を探るのはお茶の子よ」
うまくまとめられたが、実は、護が美少女恋愛ゲームやらせるときに、こっそり護の番号を見ていたのだった。
「決闘よ、大事な妹を返して欲しかったら、この町の遊園地に来なさい、来ないと妹の血を骨までしゃぶり尽くすわ、ちなみに、あなたの両親には寝て貰ってるわよ」
「そこまでするのか……」
そう言い残し、莉央を抱えたまま護の前から姿を消したカーミラ。電話越しで護とカーミラの会話を聞いた伊織が、直ぐに駆けつけてきた。
「お待たせ、カーミラから呼びつけて来るなんて、わざわざ探す手間省けたわね……」
「でも、莉央が……
「おいっ………」
神里家五ヶ条、その一、お風呂とトイレは日替わりで交代で掃除する。
両親からお小遣いを貰う前提で、護と莉央が交わした両親との約束である。そんな事かと呆れる伊織、急ぎ町の遊園地に着くと、門は開門された状態で護達を迎え入れるかの様な異様な感じが漂っていた。
「来たわね……しかも、連れがいたのね、まぁいいわ」
「莉央はどこだ?」
「あの子ならあそこよ。大丈夫よ私のコレクションにするから傷はつけないわ」
カーミラが用意した、ガラス張りのケースに莉央が人形の様に閉じ込めれていた。
そんな事は露知らずに、莉央は幸せそうに寝ている。
「さぁて、決闘開始よ、あら? 仲間がいたのね、いいわ、まとめて相手してあげるわよ」
「うげっ何だこれ」
「神里君、気をつけて」
突如、護の周りに霧が発生し、伊織の姿が見えなくなる、当然カーミラの姿も見えない。
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