第5話 吸血鬼カーミラ1
「……なにやってるの? 宮本さん」
「神里君こそ、なにやってるの?」
お互い顔がひきつった状態。
………それよりも、見られたかも。何とか話を誤魔化したいが、会話が続かない。それは、伊織も同じ考えであった。
「じゃ、俺はこれで」
「……神里君、炎を出せるわよね?」
…………バレてる。
適当にやり過ごしたいが、伊織の目がキラリとするどい眼光を光らせる。
「……まさか、俺が火遊びする悪い子に見える?」
「見えないね。でも、一人で手から炎を出して何やってたの?」
誤魔化す理由を探りながら、この場を何とかやり過ごしたいが、伊織が中々帰してくれない。
「宮本さん、もう遅いから帰っていいかな?」
「えぇ、また明日ゆっくり話しましょうか…」
明日が怖い、完全に見られた。明日から、どう接すればいいのかわからない。
翌日、休み時間も、昼休みも伊織は話しかけて来ない。放課後になっても話しかけて来ない、と言うか伊織はクラス委員の会議の為足早に教室を出た。思い過ごしだろう、それならそれで良かった。伊織の姿がない事を確認し、下駄箱に向かう護、校門まで無事に何事もなく出られた。
校門を出て歩いていたら、護に向かって光の矢が飛んでくる。護もファイヤーボールを放ち、相殺した。
「現場押さえたわよ、神里くぅーん」
「み、宮本さん委員会は?」
「えぇ、終わったわよ…そして、神里君の尾行に入りました」
その笑顔が怖い、はっきりと尾行すると言い切った……。
護が魔法を使う現場を押さえる為、わざと護に向かって光の矢を放つ伊織。 今ので護も、伊織が同じ魔法使いと察しのだった。
「宮本さん、君も手から光の矢やら球を出したよね? つまり、俺も現場を押さえた訳で」
「何の事だか、わかりませんけど? あなた、あれですか? いわゆる中二病ですか?」
お互い探り合いを入れているのに、何故か口論になる。いきなり中二病とか言われたら、そりゃ護も腹が立つ。
「宮本さん、小銭を排水溝に落としちゃって暗くて良く見えないんだよね……ライトある?」
「あらら、困っている人を助けるのも委員長の務め、任せなさい」
手から明るい光が飛び出し、排水溝を明るく照らすが、我に返った伊織がハメられたと気づき、仕返しに出る。
「神里君あるにはあったけど、蔦が邪魔して取れないの………燃やしてくれる?」
「あーはいはい」
護も手から炎を出して、我に返った。
………やられた。
「神里くぅーん、秘密をバラされたくなかったら、私に付き合って」
もう、逃げられない、護もお互い様だと言い返すが、伊織が自分は不思議ちゃん超能力娘と名前が通っているから、問題ないと開き直る渋々伊織に付き合う護、とりあえずドーナツショップで、ドーナツを食べながら話を切り出す。
「私、ドーナツ大好きなの。ほらほら、神里君も食べて、私のお・ご・りだから」
絶対何か企んでいる、怖くてドーナツに手が出ない護。そんなのはお構い無しに、伊織の話が始まる。
「最近起きている、吸血鬼事件知っているよね? 私は吸血鬼を追って調査しているの」
何で吸血鬼を追っているのか謎だが、伊織は魔族でもない事ははっきりした。
「わかっているのは、吸血鬼の名前はカーミラ、若い女性の血を好む女の吸血鬼」
「宮本さんも、危ないんじゃ?」
「あら、心配してくれるの?」
自分も標的にされるのに、この余裕は何なんだろう。護はこれまで、魔法が使える経緯と先ほど戦ったサキュバスと吸血鬼カーミラの関係を話し出す。何となく伊織には、話しても問題ないと察したからだ。
「じゃ、早速だけど、調査開始ね」
「えっ? 今から」
何か不満か? みたいな顔をされ、これ以上は何も言えず、伊織の後をついていく。着いた先は、神社だった。
「私の家神社なの」
「み、巫女さん」
護の中で、何故か乱れた巫女装束を着た伊織を想像した自分が恥ずかしい。
初めて女の子の家に来てしまった、カーミラの調査を手伝うにしても、初めて行く女の子の家に緊張が止まらない。居間に案内され、早速神魔町の地図を広げる。広げるや否や、紐と五円玉を用意しそれをくくりつけ、地図の前にかざした。グルリと五円玉が回りだし、五円玉が矢印を印すかのように地図の北側を指し始める。
「ここ、廃墟の教会? 確か墓地があったけど……」
「また、幽霊ですかぁぁ?」
護にはソウルイーターとの戦いで、幽霊がトラウマになっている。
「どうしたの?」
「ゆ、幽霊が見えるのですよ……」
「私も見えるけど、もしかして怖いの?」
からかうように伊織の顔がにやけだし、護の弱みを更に見つけて、内心喜んでいる。あんな、怖い思いをしたのだから、当然怖いに決まっていると言いたいが、言えない護がここにいた。
「じゃあ、行きましょうか、幸い明日が休みで助かったわ」
「すいません、良い子は寝る時間です」
「まだ、七時前だよ、何言ってるの?まぁ行かないなら、行かないで良いけど…………明日から炎使いの神里君て有名になるよ」
ぐうの音も出ない、護にとって魔法が使える事が知られるのは好ましくない。観念して、例の教会へ行くハメになってしまった。
「誰も居ない……」
「あぁ、主よ、この天才として生まれた私をお許し下さい」
神社の娘が、何を懺悔しているのやら、しかも、自称天才とか言っている。確かに成績は学年トップクラスだし、運動神経も中々な物。
「さ、冗談はこれまでにして、調査開始ね」
周囲を組まなく探すが、マリア像が不気味にたたずみ、静寂だけが過ぎるばかり。何となくだが、マリア像から気配を感じる、護の魔族信号、いわゆる第六感がそう伝えてる。
「み、宮本さん、何となくあのマリア像………」
「うん、何か居るね」
試しに伊織が光の魔法を放ち、マリア像を照らし出すと、何とも上品な格好をした貴婦人が現れた。
「誰?」
伊織が話しかけると貴婦人は暫く黙り、重たい口を開き出す。
「私、ここに良くここに死者の供養に来ますの」
こんな廃墟となった、教会に何故来ている? 明らかに怪しすぎる。
死者の供養いわゆる墓参りだが、こんな日の陰った時に何故なんだ? 疑問ばかりが浮かんでくる。
「私はこれで、失礼致しますわ、夜遊びは程々にね」
それから何も起きず廃墟を後にしたのだが、墓地から騒がしい物音が聞こえ出す。
様子を見に行ってみると、若い女性が群がって集団を作っていたが、まるで生気がない。
「宮本さん、こんな墓場で女子会やりますか?」
「やらないわね、神里君気をつけてね」
女性集団が止まり出すと、突然座りだす。そして、辺りにお香を焚く臭いが充満する。
「だから、夜遊びは程々にって言ったのに」
護の背後に、さっきの貴婦人が現れる。
不適な笑みからは、邪悪な気配だけしか感じ取れない。伊織と護は真っ先に距離を取る。
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