第3話 対決アンデット
逃げても逃げても、しつこく追いかけてくるガイコツの化け物。
「クカカカ、どこに逃げても無駄だ」
観念して姿を現す護だが、一つ気になる事が。
「てゆーか、あんた誰?」
「あぁ? 今それを聞く? しゃあねーなぁ教えてやるよ、俺様はソウルイーター。魂を食らうアンデット」
まさか、こいつも魔界の魔族なのか? ロールプレイングゲームならアンデットは光か炎に弱いはず。しかし、魔力が戻らないから魔法が使えない。
完全に打つ手なし。
「あんたも魔族?」
「クカカカ、そうだ。人間の魂を食らう為に魔界からわざわざやってきたぜ」
やはり、こいつも魔族か……と、面倒くさそうな顔をする。どうやって人間界に来たなんて、聞く気もさらさらなかった。
「取り敢えず、お前を食わせろ」
「イヤです」
ソウルイーターが護に突進してきたが、危険を察知した護の手から炎が現れた。魔力は尽きたはずなのに……思い返してみると、佐藤さんの娘の幽霊、愛理に驚かされて倒れ込んだ。その後佐藤さん親子に解放された。
「謎は解けた……」
倒れ込んだのが幸いし、眠っている間に魔力が回復していたのが幸運だった。神様はまだ、護を見捨ててはいない。
「て、テメー、魔法使いか? 聞いてねーぞ」
「聞かしてないもーん」
護が出した炎で、ソウルイーターの目を眩ませる事に成功。光の届かない暗がりに身を潜め、臨戦体勢を作り出す。隠れても臭いで居場所がバレてしまう。
「もう、かくれんぼは飽きたぜ……観念して出てきな」
ガタンと物音がした、居場所を教えるかの様に。
「そこか……」
ゆっくりと足踏みをし、物音のした方向に歩み寄るソウルイーター。何の違和感も感じず、ただひたすら獲物を狩るように。ガツンと、何かに当たったソウルイーターが勢いで転んでしまった。
「よっ」
「テメー何しやがった?」
転んだのを見計らい、何事もなかったように護が姿を表した。護の手には、どこかに落ちていたワイヤーがあった。
「いやー、ここって調理場だったのね。しかも、道中ワイヤー拾ってさー、使えるかなと思ったら、見事に引っ掛かったな」
調理場に逃げ込む道中に、ワイヤーを拾い、暗がりを利用しソウルイーターを引っかけて、転ばす作戦に躍り出るが見事に成功。
「しかし、まぁ良い光景だなぁ」
「んだとーテメー、マジぶっ殺してやる」
「お前、気づいてねーの?」
「へっ?」
さっきの護が仕掛けたトラップにより、ソウルイーターの背骨が抜かれ、骨盤が支えられなくなり、立つ事も出来なくなっている。慌てて修復しようとしたが、そうはさせまいと護がお玉を武器に、ソウルイーターの背骨をだるまおとしの様に叩いていく。
「うっ、や、やめろー」
無情にもソウルイーターの体はバラバラとなり、頭蓋骨だけが残る。
「テメー、このやろー」
体はバラバラでも、頭部だけがまだ宙に浮き護に襲いかかるが、何故かこれ以上前に進めない。
「回りを見てみな」
護が手から炎を出し、灯りを灯すと回りにワイヤーがソウルイーターの周辺に張り巡らせていた。
「いつの間に?」
更に調理場にあった未開封のサラダ油を取りだし、ワイヤーにまんべんなくかけ始める。
「さぁ、何がしたいかわかるよね?」
「おい、お前まさか」
そのまさか。手から炎を出し油まみれのワイヤーに火をかけると瞬く間に炎がワイヤーを伝ってソウルイーターの体を焼き尽くす。頭蓋骨だけが残り、浮遊して逃げようとしたが。
「レクイエムシュート」
と、叫びながら護のファイヤーボールが炸裂したのだった。
「ぎょえぇー」
「ざまぁみろ、化け物」
護が中指を立てながら、ソウルイーターの魂が天に上り消えて行くのを確認したと同時に、知らない男の人の魂が入れ替わりで目の前にいる。
「はっ、私は確か、化け物に食われて…そこの君、小さい女の子を連れた女性を見なかった?」
直ぐにわかった、佐藤さんの事だと。護が解放されていた部屋にいるはずだと言い、男の幽霊は猛ダッシュして去っていく。
「よしこぉぉーーあいりぃぃーーパパが今、そっちに行くぞー」
「あの人、佐藤よしこさんて言うんだ…」
ソウルイーターが倒され、何となく廃墟のホテルに清々しい空気が流れてきた。取り敢えず帰ろうとしたのだが、入り口前に佐藤さん親子が待ち構えていた。はっきり言って心臓に悪い。
「お兄さん、ありがとう。これで成仏できますわ」
「あはは、良かったですね。あの世でも幸せに」
「もし、あなたが死んだら、私はあなたと浮気しちゃうかも」
旦那が戻って来たのに、小声で護に囁くが、取り敢えず早く逝けと言いたい。別れを告げると、佐藤さん親子は無事成仏し、護も知らぬ間に手を合掌。
「さて、帰るかな」
帰る頃には、綺麗な夕焼け空が護を出迎えてくれた。今回わかった事、魔物と言うか魔族の姿が見える、霊感があるわけじゃないが、幽霊が見える。これに、懲りて二度と心霊スポットに足は踏み入れないと誓いを立てた。
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