抑止力

 リリスが私の前に出てくるや否や、




「昨日、話せなかったお話、させていただきますからね。」




そう言って詰め寄ってくる。まぁ、料理食べたんだしいいとするかと思い、首を縦に振る。




「私と結婚してもらいます。」




そう唐突に言いだす。私としては、驚きもしなかった。




「で、本音は? 」




「本音ですって? 私はラン様のことを好いております。」




「嘘だな、力を自分たちの国が保持し所有したいんだろ。」




図星をつかれたリリスは、顔をしかめっ面にしながらも、この国の内情を話し始めるのであった。




「あなた様が、倒した転移者ふたりが倒れたことにより、この街は今、魔王軍の侵攻に晒されています。ですから、それを止めてほしいのが、一番の願いなのです。」




そう言いながら、内心は私の戦闘力で他国を脅すつもりなのは、わかっていた。まぁしかし、侵攻されそうなら、止めるほかないかと考える。




「結婚の話は、無しだからな。私は自由に生きさせてもらう。いいな。」




その言葉に、リリスは困惑しながらも、




「絶対にご結婚していただきます!! 」




と後をつけてくる。



 しかし、先ほどからある方角から、妙な気配がする。




 「3人に問う。向こうの方角には何がある。」




そうランが問うと、3人全員が一つの方向を指さす。その方向は、修羅ほど興奮するほどではないにしろ、なんとも愉快な雰囲気を醸し出していた。




「魔王が関係しているのか? 」




そう問うと、リリスが




「荘厳に立ち、人間共を寄せ付けない城と聞いたことがあります。まさか、お独りで行かれるつもりですか? 歴代勇者でさえ、侵攻を防ぐのにやっとだったというのに。」




ランはリリスが私をどの程度に思っているか感じとった。魔王には敵わないと思っている。ならば、それを利用されてもらおう。




「そうか、どれ少し様子を見に行くとしよう・・・。なぁに、少し見てくるだけだ。」




そう言って、ポンとひと飛びで3人が指さした方角へと飛んでいくのであった。残された3人に沈黙が流れていた。




「あの御二方、良ければ城に案内しますが。」




「ひ、姫様。ありがたき幸せにございます。」




「なんと、お礼を申してよいか。」




リリスが気を使い、城へと案内するのであった。




一方のランは、ゆる~~く着地して、魔王城の目の前まで来ていた。




「この殺気!! 滾る!! 心が滾るぞ!! 」




と放たれた野獣の如く、叫んでいたのであった。その声に、魑魅魍魎共が動き出したのであった。

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