魔を塗る

 そびえ立つ城の前を、私は悠然と歩いて行く。



門番の化物共が斧を振り下ろす。それを優雅によけて、「朱筆」の一線で、化物共の首筋から鮮血色が飛び出し、大地に絵が出来上がる。



一枚、題名は「赤き翼」とでもしようか。




そして、固く閉じられた扉に一蹴り、すると、脆くも扉が飛んでいく。



出てきたのは、大量の小鬼たち。私を見るとすぐに襲いかかってくる。



「黒炭」と「朱筆」を使い、線を描いていく。



紅い筆と黒の筆で飛んでくる者達から赤い絵の具を取りだす。




そして、線を描いていく。小鬼たちは狂乱に支配された顔で私と戯れる。



私が円を描けば、そこには10匹の鬼の首が空を飛び、私が線を描けば、そこには10匹の鬼の胴体が横たわる。




そこから、もう線を描きまくる。小鬼たちは止まることなく、私に襲いかかってくるが、剣を一振りすれば、一瞬で赤き絵の具と化す。



小鬼の首は飛び、胴体は仲間の小鬼たちに踏みつけられる。




それもまた、命の彩色と感じながら、鮮やかに描いていく。



その圧倒的、強さに小鬼たちは、怯み、絶望の色を見せる、その色を黒い一線がその色の時を止めていく。最後の絵の具で一線を加えて、絵が完成する。



そうだな、名前は、「小鬼の蓮華」とでもしようか。




さらに、奥に進むと、今度は2人の魔人が立っていた。




「おやおや、一般人がお独りで、こんな場所に来られたのですが。」



「いや、我々も舐められたものですなぁ・・・。」




そう言ってくるが、しゃべる蝿には興味ない。興味があるのはその血肉だけなのだ。




2人の魔人が対となって襲ってくる。




「遅い・・・。遅すぎるぞ・・。」




そう思いながら、彼らの身体に黒炭で、骨を折り、そのまま朱筆と黒炭で絵を描き始める。そして、彼らは完成と同時に生き絶えるのであった。




うむ、なかなかの出来だ、題名は「衝突」だな。二つの物体が衝突する際の、激しさを現せている。




 そして、この城に残っている殺気を順々に消していく。最後に残ったのは、この城の長らしき者だけとなった。




彼は、表情ひとつ変えず、




「よくぞ、ここまで来た。お前は強いな・・・。然らば、私と死闘を繰り広げよ!! 」




えらそうな者は、戯言をほざき始める。



「朱筆」が疼く!! 赤き線を求めて。「黒炭」が騒ぐ!! 黒き線を求めて。



その者が一直線に私にその刃を向けてくる!! 私はそれを二本の線で受け止める!!



その者は、この世界の勇者とやらよりは、強かった。だが、その力は私には及ばない。無慈悲にも私はその者を圧倒し、切り捨てる!!



生命の花びらが玉座を赤く染め上げる。



題名は「玉座からの解放」とでもしようか。



そして、私は魔王軍を壊滅させてしまうのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る