落下物

 腹がはち切れそうになるぐらいに食った私は、この世の幸せを噛みしめていた。




修羅の世界では考えられないほど、腹が膨れたからである。なんたって、あの世界では、満腹は障害にしかならず、常に腹が満たされぬ状態で過ごしていた。




しかし、今は腹が満たされ襲われる心配もない。これほど、幸せな時を噛みしめていいものかと怖くなるほどである。




すると、リリスがこちらに寄ってきて、なにやら話しだす。




「ラン様、少しお話宜しいでしょうか?」




「あ、駄目、今すぐ眠いから後にして。」




と、睡魔に負けて彼女の話を後回しにするのであった。彼女は少し呆気に取られていた。




 朝日が私を目覚めさせる。




「ふぁああああああ。良く寝た。」




そう言って、起きるとリリスが隣で寝ていた。なんじゃこいつ。と一瞬戸惑うが、すぐに冷静さを取り戻し、城を探索し始める。




「あいつがこっちに来るぞぉおおおお!!! 」




と城内が騒がしくなる。あいつとは、何者だと思いつつも、私には関係ないことだと思いながら、城のあちこちを見て回る。




随分と、風情がない作りだなと思いつつ、面白そうなものはないかと、扉と言う扉すべてを開けて回る。




城には面白いものはなく、仕方がないのでトンとひとっ飛び、城のてっぺんに降り立つ。そこから、見る朝焼けの街並みは色あざやかな絵のようにきれいであった。




 「ほぉ~~~、これはなかなかに風流だ。」




その光景は、私の荒んだ心を癒してくれるが如く、人の営みを感じだすものであった。




それで、私のなにかが感じたのか、もっと高い場所から覗きたくなる。大きく地面を蹴り上げて、空を蹴り、高くもっと高みへと上り詰める。




すると、大きな大陸が見え始める。鳥の群れが足元の方に見える。肌が少し寒さを感じ始めた頃であった。まだまだ、登り足りないが、今日はここまでにしておこうと思い、そのまま、落下していく。




ほのかに、温かさを感じながら、城の近くの湖へと一直線に落ちていくのであった。




『ヒューーーーー、ちゃぽん!!! 』




と落下し、水が勢いよく宙に舞う。そして、大きな波となり、岸辺に波打つ。




その波に乗って、私は岸辺に辿りつく。城内に居たものたちが何事かとこちらを見ている。




その温かな視線を感じながら、私はゆっくりと城へと戻っていくのであった。




リンとアテナはその光景を見ながら、アルさんにこんな力があったかと摩訶不思議に思うのであった。

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