第17話

完全な油断だった


肉体を得たから


無呆備な予備器を放置

または第三者に預ける危険性

その他諸々の危険の排除


偶然とはいえ

上手く嵌った高揚感


偶然ではない

遺物の配置


精身体の思考速度と

肉体の反応速度


別にピンチではない

ミミの処遇を決めかねた

一瞬の出来事


生身の体と

スライム特有の再現力と

手持ちの素材

神力や魔力

聖樹由来の素材からの

精霊力等をもって

装備のレプリカを再現する

その結果スライムの肉体は

水を張った壷とみなされ

聖精霊結晶は

聖剣とみなされる

本体が鞘とみなされ

癒しの風が吹き荒れた


追われるように

まず染みこんだ赤い水が

ワームのように

絡まりあいながら

エメラルドを砕きながら

突き進む

一部はそのまま

年輪のような

石の片割れを内包し

そちらに行かなかった本流は

壁に強かにぶつかり

緑の多頭の蛇のような物が

壁を削りながら駆け上がり

翡翠に群がった固体は

白く光り

崩壊しながら

地に埋まり


駆け上がる固体は

緑の風に触れ

煽られ

体液を巻き散らしながら

壁に埋まる


削り取られた

赤く発光する岩は

細石のような

極小の破片になり

光りを失い

灰のように崩れ去る


更々と砂時計の砂のように

赤い砂が落ちていき

溜り積み上がっていく


優先順位を考えていた

ミミの確保

鉱石の回収

謎の生命体の駆逐


最初にしたのが

エメラルドと年輪石の回収

これ以上の固体を

増やすのを嫌った為だ

それから埋まったキューブの回収


そこで誤算がおきた

表面の滑らかさから

それほど大きくないと

判断した

実際は押し込まれた先が

散弾の破片のように

地に根付いた木の根のように

深く穿っていた

引き抜いたというよりは

触れて収納しただけなのだが


地面が崩れ

陥没した


すわミミを連れて転移しようと

駆け寄ると


暗い裂け目の穴倉の中で

赤く光りを帯びていた壁が

点滅を繰り返し


砂溜りが湿り気をおび

ピキパキパキパキと

不穏な音を立て


最初は赤黒い

粘液のような物が

どろりと落ち

やがて更々の

赤い液体が

雫を撒き散らし

足元まで迫り

轟音を上げながら

穴の中に流れ込んでいく


水源の壁の穴から

孔雀のような

濃い緑の羽が生えた

鱗で覆われた

槍のようなものが

飛び出してきた


迷わず金鶏のスタチューを取り出すと

実体化自立もしくは

自身で動かすつもりが

割り込みがあり

勝手に人形になり

炎剣を掲げ

ミカエルか?

次は殺すと思いながら

実体化をキャンセル


リエルの聖盾を掲げ

上体を沈め上側に

斜めに受け流すことで

回避した


リエルの聖盾から白い破片と

水飛沫が飛び散り


神のシリーズの防具の破壊など

経験したことの無いスナは

驚愕に目を見張った


一度上方に通り過ぎた槍が

円を描いて宙返りしてきた

冷静に一歩下がってやり過ごすと


地面を崩しながら

水の溜まった穴に消えていった


三角に火の模様

護符に限界まで神力を注ぎ

穴に投げ入れた


水に触れた護符は

触れた傍から気体に変え

摩擦でプラズマが発生し


融爆していく

雷火

それは

紫電というには黒く

炎というには白く

破壊というには静かで

限定的で

中の水だけ浸食していった


ミミにとっては

そうでも無いらしく

チチチチチ

千鳥が鳴いたような

その音で

目を覚ました


手を伸ばせば引き千切れるような

そんな猛威が目の前にある


『動くなちょっと待っていろ』


水の底では全ての物が

溶け合うような熱の波動から

逃げるように槍が壁の隅間を進み

穿ち推進力を持ったまま

羽を螺旋系にして進み

やがて飛び出た壁の元に

辿り着いていた

起爆剤のように

体積を増やしていく

水に押され

突き抜けた先に

緑の光りを見た


ゴッバ

壁に一気に亀裂が入り

裂けて碧い液体が溢れ出た

地面を崩壊させながら

泉と呼ぶべく

池が出来るまで

それほどの時間はかからなかった

やがて水が落ちきると

遥か上まで続く


トンネルを

緑色の鱗の

羽の生えた馬

角があり

甲冑のような物を

身に着けた

ドラゴンのあぎとのような

顎を持ったものを

馬と呼んでいいのか


それがスパイラルな軌道で

上へ上へと進んでいた


三角の護符は

役目を終えて崩壊して

泉に溶けた


水に満たされたことで

落ちたシーズパイセーズが

活性化した


異界の門

水の護符

分解と分裂の紋章


この時エルフの森

北の泉が枯れた


たまたま樹木帝の下に

訪れていたメリジェーヌが

リバーマンとエルリザード

ラミア達を総動員して

調査していた


枯れた泉の穴

そこから飛び出してきた物に

水の幕を張り捕縛

事情を聞いてみることにした


樹木帝は処刑すべしとの意見で

レッドスペクターを用意していた

水河の行方を聞かないといけませんし

悩んでいると


風精霊のボレアス将軍と

エアリアル参謀長がいらして

身柄を引き取りたいと

申し出がありました


見返りに青い鳥の情報と

環境改善等を条件に

引き渡しました


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