第11話

通称血の池

赤き池からミミは這い出してきた


「死ぬかと思いました」


真っ白だった毛に

血のような水が滴り落ち

直視できない状態だった


酸でもかけたように

しゅわしゅわシュウシュウ

煙が出ていた体から

霧のような物が晴れると

丸いぼんぼりが付いた

グレーのベレー帽を

斜めがけした

軽く巻いたシニョンの

ピンクの髪

黒い毛皮の襟

ピンクと黒のストライプのリボンで留め

なだらかな肩からすらりと伸びた腕

白く透き通るような肌

豊かな胸に控えめなピンクのぽっち

引き締まった腰に

綺麗なおへそ

黒い毛皮のビキニのパンツ

すらりと伸びた足に

黒い毛皮のファーブーツ


3度ほど瞬きして

何故に裸?

まぁ・・裸じゃない

ないな

うん

胸はいいの?

口にしていいか暫し思案し

まあいいかと思う


やっぱ黒くなるんだなと思いつつ

(毛皮が)

ピンクの髪とか

肌の色とか

着衣なのか・・

のセンスとか


変質前のシステムチェック

出来なかったな・・


「無事みたいだね」

「悪いんだけどこの地域の安全の為」


返事を待たずにシステムチェックをした

相手は極度の緊張状態で喋れないようだ


「放心している場合では無いと思うのだけど」


うさ耳少女に箱庭の管理人の称号を与えた

『箱庭の管理人』

ダークエルフの階層内

この中では如何なる存在にも害されない

簡易的な権能

ジャッジメント審判 天秤

箱庭内の善悪の判断懲罰の行使が出来る

ジャスティス正義 剣

審判の内容によって懲罰の行使ができる

慈悲 涙

罪を許すことが出来る

フォーチェン運命の話 水車

ルールに則った行動をとらせる

カーディナル女大教皇 

癒しの奇跡が使える

神託を受けることが出来る


今はこれくらいでいいかな

うさ耳無いけどな


鰐に害されないことだし

一番手前に居たやつがそろそろ池に入る頃だ

耳を齧った固体かな

今まで五体満足なダークエルフが

入水したのは見てないな

白っぽい革の鰐が赤い池に入水する

ボコボコと粟立つ水面

激しく波立ち荒れ狂うような尻尾が見えた

暫くすると黄金色の剣山の様な物が水面から覗き

雨の後の筍のように長く伸び

淡く霧のような物が渦巻き

中心に吸い込まれると

金色の水鳥のような翼

金色の髪

赤土色の肌の

六枚羽の女性

前に倒れこむように膝をつくと

長い髪が頭部を覆い前に垂れる

呼砲を上げると

肌から色素が抜け落ち

猛禽類のような嘴と金色の目

滑らかな丸みを帯びた黄金色の羽


砂はここで一旦時間を止めた

これ神鳥ガールーダか金鶏だろ

金の鳥をスキャン

手元に黒い兎と金の鳥の彫像が現れた

ここがやり直しポイントになったけれど

もっと早くするべきだった

しかし反転か白の爬虫類から

なぜに金の鳥類

ナーガ≠ガルーダ?


竜種創造で天敵作ったとかヤバスギだろ

つーか耳を食べ残すから

兎は一羽なんだっけ

羽の材料は判った


まあ進めてみるか


鳥が眩く光り輝くと

辺りを覆いつくす重苦しい霧が晴れた

瘴気が拡散・・消滅したのか

鳥の周りだけ水が青く

大地に草花が生え

澄んだ空気になった

飛び立とうとするが水気を含んだ羽は重く

空を見上げた

赤い月が怪しく光り

鳥の飾り羽が赤く染まる

瞬時に羽や羽毛が燃え

辺りから黒い旋風がなだれ込み

燃え尽きた黒い塊に流れ込む

大きく楕円の卵のような

黒く艶やかな石のような

その物体から無数の剣先のような突起

それが上部に一気に伸びて

雲丹のようになった

パキンともパリンとも言うような音と

渦巻く大量の瘴気によって

辺りの視界が悪くなる

劈く甲高い泣き声


黒いダイアのような鱗で覆われた

細長い体王冠の様な頭部に

黒く縦長の金の虹彩

内側に歯のびっしり生えた嘴

首から背中尻尾まで棘棘で

肩から伸びる翼は菱形の鱗で覆われ

折れた先に鉤爪がそこから下にマントのよう

短い前足が2本

3本指の爪は鋭く

長い胴と掴む事に特化した

2本の足

長い鞭のような尾っぽ


黒竜というか

見た目は暗黒竜である


『ミミ君説明は後でこれ念話』

『神託でもいいや他の子収納』

『大丈夫全部わかってるから』


うろたえつつも収納してくれた

生き物収納できるとか

頭おかしいね


木属性

収納物のつくも神だから

マジックハウス扱いなのかもね


まあいいや

討伐する前にシステムスキャン

ちゃんと竜種になっているね


『ミミ君シエルジャッチメントって唱えて』

エル神の

ジャッチメント審判


聖光のブリザード

光りの粒が唸りを上げて

渦巻き黒竜を巻き込み

覆い尽くす


『今瀕死というかぎりぎり姿を保ってるから収納して』


無事収納できた事を確認して

池の淵から西側に左手を向ける

極光

バシュンと白い帯が

前方を走る

放射状に地面が液晶化し

見渡す限りの白い空白になった

前方は何も無く

煙が辺りに漂うだけ

3歩ほど前に出ると

足元に穴が開き


『ミミ君飛び込んで』


躊躇しているミミの背中を押すと

自分も飛び込む

穴は自然と塞がっていた

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